<論文>金融システムへの理解を促す消費者教育 : 英国金融サービス庁の挑戦
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概要
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金融サービスの規制と消費者の保護を目的として, 英国政府により設立された独立機関「金融サービス庁」は, 金融システムの一般的な理解を促すという金融サービス市場法(2000年6月12日, Financial Services and Markets Billは国会を通過, 以下「本法」と称する)の一目的を託された。それは, 小口金融取引の受け手である消費者に対し, 「特殊な投資, あるいはその他の金融取引と連動するベネフィットとリスクに関する自覚を促し, 適切な情報・アドバイスを提供する」ものである。この消費者教育事業は金融サービス庁の前身である旧証券投資委員会が, 1986年金融サービス法の下で展開してきたものであるが, 本法は金融サービス規制の中核を担う金融サービス庁のさらに強固な役割を規定した。制定法の枠組みから導かれる金融サービス庁の消費者教育は, 公平かつ効果的な小口金融サービス事業の向上を, 包括的に調整する重要項目の一つである。英国政府は, 資産管理教育に対する社会的期待の高まりと, 消費者の金融に関する理解の程度および消費者教育の現状を踏まえ, 1998年11月に資産管理教育の施策案(グリーンペーパー^7)を公表した。本稿の目的は, このグリーンペーパー等から金融サービス庁が担う消費者教育の総合的施策を概観し, グローバル化された今日的な金融システムにおいて, 消費者もまた, 事業者と共に金融システムの担い手としての役割を自覚し得る, 消費者教育のあり方を考察するものである。
- 金城学院大学の論文
- 2000-03-28
著者
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山口 正久
金城学院大学消費生活科学研究所
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山口 正久
金城学院大学・家政学部
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杉浦 君代
金城学院大学・大学院人間生活学研究科博士課程後期課程
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杉浦 君代
金城学院大学大学院人間生活学研究科博士課程後期課程
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