多発性硬化症の病態解析から治療標的の同定へ
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概要
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多発性硬化症(Multiple Sclerosis; MS)は中枢神経系の脱髄疾患であり,その本態は自己反応性T細胞を含む免疫担当細胞を介した組織障害である.長らく自己免疫疾患に関わる病原性T細胞の本体は,IFN-γ産生性のTh1細胞と考えられてきたが,最近なってTh1細胞やTh2細胞とは機能的に異なる新たなエフェクター細胞T集団として,より強力な炎症惹起能を有するIL-17を産生するTh17が,強力な自己免疫疾患誘導性を有する病原性T細胞集団であることが示された.我々は,自己免疫病態形成に関わる病原性T細胞の機能解析を目的として,寛解期MS患者由来の末梢血T細胞を対象に,DNAマイクロアレイ法を用いた網羅的遺伝子発現解析を施行し,新たなMS治療標的候補分子として,オーファン核内受容体NR4A2を同定した.RNAi法を用いたT細胞のNR4A2発現抑制により,炎症性サイトカイン産生抑制と,実験的自己免疫性脳脊髄炎(Experimental Autoimmune Encephalomyelitis ; EAE)の軽快が認められた.本稿では,NR4A2をターゲットとした分子標的薬による新規MS治療法開発の可能性について紹介する.
- 2009-08-31
著者
-
山村 隆
国立精神・神経センター武蔵病院神経研究所免疫研究部
-
大木 伸司
国立精神・神経センター神経研究所・免疫研究部
-
大木 伸司
(独)国立精神・神経医療研究センター 神経研究所免疫研究部
-
山村 隆
国立精神・神経医療研究センター神経研究所免疫研究部
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