目標Kt/Vが得られる透析液流量の算出法
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概要
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血液透析開始前に目標Kt/Vを入力すると透析終了後には入力されたKt/Vが得られるのであれば,計画的な透析の実施が容易となる.これを実現するためには,必要な透析条件を透析開始前に決定しなければならない.そこでわれわれは,局所血流尿素動態モデル(regional blood flow urea kinetic model)を解析することにより,血液透析開始前に目標Kt/Vが得られる透析液流量を算出する方法を開発した.この方法では,まず月1回の定期採血日に施行した透析の諸条件と透析開始時と終了時の実測の血清尿素濃度から体液量を算出する.そして,その後の1か月間は各透析の開始前にすでに算出されている体液量とさまざまな透析条件から目標Kt/Vを実現する透析液流量を算出する.60名の患者において,この方法により計画透析を試みた.その結果,透析後には,設定したKt/V(目標Kt/V)が得られることが示された.設定Kt/V(x)と実測Kt/V(y)との間には高い直線相関が認められ(y=1.01x−0.03,r=0.973),かつ設定Kt/V(1.15±0.21)と実測Kt/V(1.14±0.22)との間には有意の差が認められなかった.この方法を用いれば,より高い血流量とより低い透析液流量の組み合わせによる計画透析も可能になる.尿素クリアランスを変化させないという制約の下で血流量を増やし透析液流量を減らした場合,リン酸クリアランスやβ2-ミクログロブリンクリアランスに変化が生じるか否か調べた.その結果,血流量を増やして透析液流量を減らしてもリン酸クリアランスは変化せず,β2-ミクログロブリンクリアランスはむしろ増加するという所見を得た.
- 社団法人 日本透析医学会の論文
- 2009-12-28
著者
-
新里 高弘
日本透析医学会統計調査委員会
-
新里 高弘
名古屋大学大幸医療センター内科
-
新里 高弘
名古屋大学大幸医療センター
-
前田 憲志
大幸医工学研究所
-
三輪 真幹
名古屋大学医学部附属病院 在宅管理医療部
-
三輪 真幹
大幸医工学研究所
-
原 和弘
四日市道しるべ
-
新里 高弘
大幸医工学研究所
-
三輪 真幹
熱田クリニック
-
林 功
おおしみず愛知クリニック
-
加藤 竜典
愛知クリニック
-
新里 高弘
大幸医工学研
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