2型糖尿病
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
糖尿病とは,インスリン作用不足による慢性の高血糖状態を主徴とする代謝症候群である.糖尿病は,成因と病態の両面から,1型,2型,その他の特定の機序・疾患によるもの,妊娠糖尿病の四つに分類される(表1).その一つが,2型糖尿病である.2型糖尿病には,インスリン分泌低下を主体とするものと,インスリン抵抗性が主体で,それにインスリンの相対的不足を伴うものなどがある(表2).欧米においては,肥満に伴うインスリン抵抗性から糖尿病状態に至る場合が多いのに対して,我が国においては,肥満がなくインスリン分泌が低下して糖尿病状態に至る例も珍しくない.2型糖尿病の場合は,口渇,多飲,多尿,といった典型的な糖尿病症状を認めない場合も多く,最近では無症状で健康診断にて偶然発見されることが多い.高血糖状態が長期間続くと,以下に述べる(慢性)合併症の出現に繋がる.糖尿病の三大合併症は,細小血管障害である,網膜症,腎症,神経障害である.また,大血管合併症として,脳血管障害,冠動脈疾患,下肢閉塞性動脈硬化症などがあるが,これらは,糖尿病に必ずしも特有の合併症ではないが,非糖尿病患者に比べて2〜4倍頻度が高く,患者の生活の質を低下させるのみならず,生命予後を規定する疾患群として重要である.2型糖尿病の治療の基本は,食事療法(標準体重1kgあたり25-30kcal/日),運動療法であるが,前述の合併症,あるいは,他の合併疾患の状態を考慮する必要がある.特に,腎症が存在する場合は,一般に塩分やタンパク質の摂取量についても制限が必要になる.これらの治療によっても血糖コントロールが不十分な場合,経口糖尿病薬の適応となる.現在,我が国では,スルフォニル尿素薬,速効型インスリン分泌促進薬,ビグアナイド薬,インスリン抵抗性改善薬,アルファグルコシダーゼ阻害薬の五つのジャンルが使用可能である.薬剤選択にあたっては,インスリン分泌能やインスリン抵抗性の状態など個人個人の2型糖尿病の病態に加え,各薬剤の副作用などを考慮して選択する.また,インスリン療法は,以前は最終手段であった時代もあるが,現在では,比較的早期から導入し,代謝状態が安定した後は中止するなど,考え方が変化している.インスリン療法のゴールデンスタンダードは,頻回注射法であるが,最近では初期のインスリン導入法として,経口糖尿病薬に基礎インスリンを併用する方法も見直されている.なお,2型糖尿病の発症予防の試みは,欧米を中心に行われているが,食事,運動などの生活習慣への介入により発症が抑制されるのみならず,上述のビグアナイド薬によるインスリン抵抗性の改善やアルファグルコシダーゼ阻害薬による食後高血糖への介入も発症予防に有用である可能性が示唆されている(ただし,保険適用外であることに注意).
- 2009-12-15
著者
関連論文
- 1型糖尿病 環境因子 (新時代の糖尿病学(1)病因・診断・治療研究の進歩) -- (糖尿病基礎研究の進歩 糖尿病と耐糖能低下の成因分類と発症機序)
- 1型糖尿病の完治に向けて : 本特集の企画にあたって
- 自己免疫性(急性発症典型例) (特集 1型糖尿病のすべて--1型糖尿病の成因と病態)
- 臨床経験 糖尿病性ケトーシスの初期外来治療におけるインスリンリスプロ混合製剤(ヒューマログミックス50)3回注射の使用経験
- 劇症1型糖尿病調査研究委員会報告(追補) : 発症時のウイルス抗体価について
- 劇症1型糖尿病調査研究委員会報告 : HLAおよび細小血管合併症について
- 妊娠関連発症劇症1型糖尿病の臨床的特徴とHLA解析 : 劇症1型糖尿病調査研究委員会報告
- 劇症1型糖尿病調査研究委員会報告 : 疫学調査の解析と診断基準の策定
- 1型糖尿病患者の治療および食生活の実態と食事療法実践意識
- 少量のビグアナイド剤が効果を示したと考えられるNASHの二症例
- 日本人1型糖尿病患者におけるNPHヒトインスリンからインスリングラルギンへの変更が血糖コントロールに及ぼす影響
- 妊娠関連発症劇症1型糖尿病のクラスII HLAの検討 : 劇症1型糖尿病調査研究委員会報告
- 糖尿病患者におけるインスリン治療必要性予知のための抗グルタミン脱炭酸酵素(GAD)65抗体価カットオフの検討
- 1型糖尿病, 特発性副甲状腺機能低下症に橋本病, 尋常性白斑を併発した多腺性自己免疫症候群の1例
- 有痛性神経障害に対するメキシレチンの投与により房室ブロックが憎悪した糖尿病の1例
- らい菌 hsp 65 による免疫モデュレーション : NODマウスにおける Type 1/Type 2 サイトカインの誘導
- 座談会 糖尿病薬物療法の現状とこれから (特集 糖尿病マネージメントup-to-date)
- CTにて膵頭部の形態学的変化を追えた劇症1型糖尿病の1例
- 日本人1型糖尿病における速効型インスリンと超速効型インスリン投与法の比較 : 血糖コントロールおよびインスリン投与量と注射回数に与える影響
- 3.1型糖尿病の診断に関する問題点
- 特発性血小板減少性紫斑病に合併した劇症1型糖尿病の1例
- ALDH2遺伝子型が糖尿病患者の末梢神経障害に及ぼす影響について
- こむらがえりを契機とし前脛骨区画症候群をおこしたと考えられる糖尿病患者の1例
- 糖尿病患者のParieto-Occipital領域脳SPECT異常と母系遺伝との関連
- 薬剤性パーキンソン症候群を起こした糖尿病患者2例
- HbA_ 10%以上の2型糖尿病に対する短期的インスリン治療後のナテグリニドへの切り換え
- 2型糖尿病
- 30年を超える罹病期間にもかかわらず明らかな細小血管障害を認めないミトコンドリア糖尿病の1例
- 先端巨大症にTSH不適切分泌症候群(SITSH)を合併した1例
- 2型糖尿病患者における短期間の glimepiride の体重変化に及ぼす影響
- 肺炎球菌による敗血症を来たし化膿性脊椎炎・化膿性膝関節炎・細菌性眼内炎を合併した糖尿病の1例
- 糖尿病患者にみられる自己抗体 (特集 糖尿病診療の新時代2010年代の展望) -- (知らぬと損する検査方法)
- 膵島関連自己抗体 (特集 新しい臨床検査) -- (内分泌・代謝)
- 糖尿病・メタボリック症候群における抗血小板薬の意義 (第1土曜特集 抗凝固・抗血小板療法Update) -- (抗血小板薬が重要視される疾患と病態)
- 2型糖尿病の経過中にケトーシスを繰り返した1例
- 1型糖尿病の成因 (特集 たとえ話で学ぶ! 糖尿病の病態生理)
- 糖尿病関連諸検査--測定法,臨床的意義,評価法 血液検査 自己抗体 インスリン自己抗体(IAA) (新時代の糖尿病学(2)病因・診断・治療研究の進歩) -- (糖尿病の疫学・病態・診断学の進歩 糖尿病検査学の進歩)
- 糖尿病制圧に向けて (特集 糖尿病マネージメントup-to-date)
- 肥満
- 概念 (特集 メタボリックシンドローム)
- インスリン製剤の特徴と使用法 (焦点 最新の糖尿病インスリン療法)
- 糖尿病ケトアシドーシス (特集 Emergency実践ガイド) -- (疾患と対応 内分泌・代謝)
- 免疫療法の現状と展望 (特集 1型糖尿病治療の新しい知見)
- 血糖コントロール--経口剤を中心に (特集 プライマリケアのための糖尿病診療--コントロールが困難な患者さんをどう診療・指導するか)
- リスクファクターとしての糖尿病
- 1型糖尿病とウイルス感染 (特集 糖尿病と感染症)
- 緩徐進行1型糖尿病 (slowly progressive insulin-dependent diabetes mellitus :SPIDDM) の臨床的特徴 : 日本糖尿病学会1型糖尿病調査研究委員会緩徐進行1型糖尿病分科会報告(第一報)
- 肥満者におけるレジスチンと運動耐容能の検討
- 1型糖尿病調査研究委員会(劇症および急性発症1型糖尿病分科会)報告 2型糖尿病経過中に劇症1型糖尿病様の発症様式を呈した症例の臨床的特性
- 1型糖尿病調査研究委員会(劇症および急性発症1型糖尿病分科会)報告 : 2型糖尿病経過中に劇症1型糖尿病様の発症様式を呈した症例の臨床的特性
- 1型糖尿病調査研究委員会報告 : 劇症1型糖尿病の新しい診断基準(2012)