中心静脈カテーテル関連血流感染におけるカテーテルに形成されたバイオフィルムに関する検討
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概要
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中心静脈カテーテル関連血流感染は主に,静脈内挿入カテーテルに細菌が付着してバイオフィルムを形成するために引き起こされると言われている.しかしその実態はこれまで必ずしも明らかではない.今回我々は,重症基礎疾患患者で38.0℃以上の発熱が持続した症例12例について,感染を疑い抜去したカテーテルに形成されたバイオフィルムを走査電子顕微鏡によって調べ,5例にバイオフィルムを検出した.これらの患者は抗菌薬を投与されたが解熱せず,最終的にカテーテルを抜去せざるを得なかった.しかし5例中4例は血液培養,カテーテル先端部の培養は陰性であった.バイオフィルムは,カテーテルの内側よりはむしろ外側に形成される傾向にあった.カテーテル表面のバイオフィルムは微細なマトリックス成分の中に,赤血球など血球成分とともに細菌と思われる多数の菌体の付着が観察された.さらに1例は,血液ならびにカテーテル培養の両方からCandida albicansが検出され,カテーテルの外側だけでなく内側にもC. albicansによると推測されるバイオフィルムの付着が見られた.そのバイオフィルムは血球成分上に付着した出芽菌体や菌糸,酵母細胞がマトリックスに包まれて緻密な構造であった. 以上から,発熱が持続する患者は血液培養ならびにカテーテル培養が陰性であっても,カテーテル表面に形成されたバイオフィルムが感染の原因となることが確認された.
- 日本環境感染学会の論文
- 2008-09-25
著者
-
太田 美智男
名古屋大学細菌学
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太田 美智男
東京女子医科大学 医学部 感染症科
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石原 由華
名古屋大学医学系研究科分子病原細菌学
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太田 美智男
名古屋大学医学部細菌学講座
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太田 美智男
名古屋大学 医学系研究科
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石原 由華
椙山女学園大学看護学部看護学科
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太田 美智男
椙山女学園大学看護学部看護学科
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