環境影響生化学(その4・最終講義編)ヒトSOS生理機能の紹介と低線量放射線被曝問題への提言
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概要
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ストレス社会対応の新しい教室を15年間主宰すべく,次の基本理念の基,研究と教育およびアウトリーチ活動を行いました。即ち,「科学における創造とは,未知のものを既知化し,非常識のものを常識化する」という作業です。具体的には,私共の創造作業とは,突然変異という従来の概念を「変異には必然性有り」とする考えへと変更させるものでした。この変異の発生を調節するメカニズムの解明は,生命研究の根源的課題であります。SOS応答という基本概念での研究ストラテジーでした。但し,多くの工夫が必要でした。まずは,約20年間をかけて,培養ヒト細胞レベルとヒト個体レベルで,変異発生に関わるストレス状態に超高感度で反応する実験システムを構築しました。次に,約15年間をかけて,どのようなストレス状態が変異発生の調節,ひいてはヒトの健康長寿に最適かという難問を解き明かそうとしました。宇宙旅行時代となりつつある現代,果して,ヒトは地球圏外のストレスにも耐えられるのでしょうか。そのような疑問にも答えようとしました。言うなれば,ヒトの将来を見越す進化医学という新しい学問分野を切り開こうとしたのです。 以上のような活動の基盤としては,約35年以前にさかのぼりますが,大腸菌におけるSOS応答の実証に成功したこと,およびそのことにつながる医学生と研究生としての学究活動とがありました。SOS応答とは,モールス信号のSOSにちなんでつけられた生命の危機管理応答です。そのような仕組みを演繹することにより,危機管理医学という新しい社会学問体系も創造し,その実践利用もすることとしました。従って,「1 発見から無限の貢献」を目標に,毎年わずか20数名の構成員からなる教室でしたが,多種多様な学際的創造過程での成果の社会還元にも努力しました。例えば,全国各地で官民の協力も得て,食品や環境の問題と関連させた様々な市民講座を開催しました。テロ対策上の社会ネットワーク作りもしました。言うなれば,学問の創造から新しい社会コミュニティー作りの実践への展開でした。なお,そのような講座での成果を教育現場へも還元しました。PST( Practical Self Training)と命名して,学生自らに社会の問題を発掘させ,その問題の解決を目指させるという能動型カリキュラムを構築してきました。知恵ではなく知識や実利を重視し数値化することに終始しがちな現代社会の要求にも対処した教室としての活動でした。
著者
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