芥川龍之介「二つの手紙」論
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概要
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本論では「二つの手紙」で用いられた方法を明らかにするために、草稿との比較を行い、また語りの分析を行った。これらの作業を通じ「二つの手紙」における語りの方法の特徴を記述することを目的としている。草稿との比較では、語り手自身のドッペルゲンガー現象の幻視から、妻によるドッペルゲンガー現象の発現へと変化されていたことが明らかになった。また佐々木の語りの方法が、ドッペルゲンガー現象のまことしやかな報告に付け加えて佐々木は必ずそれを相対化させる「世間」の噂を並置することで、常に言説を二重化させるものであるという見解を得るに至った。こうした方法によって「二つの手紙」は佐々木の語りを絶対化しえない二重化した言説を持つことになるのである。またこの方法が、「二つの手紙」以後のテクスト「地獄変」での語りの方法へと繋がっていることも検証した。
著者
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