くも膜下出血後の脳血管平滑筋収縮性亢進の分子機構
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概要
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脳血管攣縮は,くも膜下出血発症後4日目から14 日目頃にかけて遅発性に生じる脳動脈の可逆的狭窄である.脳血管攣縮は,血管造影上約70%の患者に認められ,脳虚血症状の出現頻度は20?30%と言われている.血管攣縮は,重篤な神経障害や死をもたらす場合があり,急性期を脱したくも膜下出血患者の機能予後および生命予後を決定する重要な合併症といえる.脳血管攣縮は,くも膜下出血発症後一定の時期を経て,遅発性に生じるため,予防的治療,早期診断,発症後の迅速な治療などの対応が可能な病態である.そのため,脳血管攣縮発症機構の解明や治療法の開発をめざして,多くの基礎研究および臨床研究が活発に行われてきた.現在,いくつかの薬剤や治療法が臨床で用いられ,一定の効果が得られている.しかしながら,未だ,攣縮発症の完全予防には至っておらず,新たな予防,治療法の開発には,攣縮発症の分子機構を明らかにすることが重要と思われる.脳血管攣縮の発症メカニズムは,攣縮誘発因子の産生と血管反応性の増大という二つの側面からとらえることができる.トロンビン,オキシヘモグロビン,エンドセリン(ET-1),トロンボキサンA2(TXA2),血小板由来増殖因子(PDGF),スフィンゴシン-1 リン酸(S1P)など,動物モデルなどで血管収縮作用が認められる様々な血液および血小板由来物質が髄液中に増加し,脳動脈に対する直接的な収縮刺激として作用する.一方,血管反応性の増大は,平滑筋細胞の収縮性亢進,あるいは血管内皮細胞の弛緩作用の障害)に起因し,脳血管攣縮の遅発性発症の基盤として重要な役割を果たすと考えられる.また,攣縮誘発因子は,直接的な収縮刺激として作用するだけでなく,血管反応性変化を引き起こし,攣縮誘発に関与する可能性もある.本稿では,これまでに得られた著者らの知見を中心に,脳血管平滑筋の収縮性亢進の観点から,脳血管攣縮の発症メカニズムを考察したい.
- 2011-12-25
著者
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