一発語失行例のプロソディー異常に関する検討 ─発話速度および発話リズムの観点から─
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概要
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発語失行の主な症状の一つであるプロソディー異常は,構音の問題に対する代償反応である可能性が指摘されている(Darley 1969)。本研究では,プロソディー異常が発話の主たる症状であった一発語失行例の症状を分析し,Darley の代償説との関連を探った。 症例のプロソディーの特徴として,発話速度の低下と発話リズムの単調さを認めた。発話速度を評価するために,メトロノームの速度に合わせて発話速度を徐々に上げる課題を実施すると,一定の速度に達した時点で構音の誤りが出現した。発話リズムは単調で,その単調さを分析した結果,方略的にフット(2 モーラ)のリズムで発話している傾向がみられた。症例は自己の発話について「一本調子でゆっくり話さないとうまくいかない」と内省報告しており,上記の分析と合わせて考察すると,本症例の場合,明瞭な構音を得るために方略的にプロソディーを調整しているという説明が妥当と思われる。
- 日本高次脳機能障害学会の論文
著者
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馬場 良二
熊本県立大学
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宮本 恵美
熊本保健科学大学
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大塚 裕一
熊本保健科学大学
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水本 豪
熊本保健科学大学
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大塚 裕一
熊本保健科学大学 リハビリテーション学科 言語聴覚学専攻
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橋本 幸成
健康保険 熊本総合病院 リハビリテーション部
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