無床診療所における外来心臓リハビリテーション、抗加齢医学分野の取り組みについて
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概要
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【はじめに、目的】 当クリニックは平成23年6月開院した入院施設のない無床診療所である。同年8月、心大血管リハビリテーション(以下、心リハ)施設基準を取得し、外来での心リハを開始した。診療分野には、抗加齢医学外来を含み、生活指導を中心に、生活習慣の改善を提案している。 当クリニックにおける理学療法士の役割と活動状況について紹介を行い、その課題について考察することが目的である。【方法】 当クリニックの活動を症例検討を中心に把握し、課題と今後の展望について考察する。【倫理的配慮、説明と同意】 症例報告として紹介する対象者については、本研究の趣旨、内容、倫理的配慮および個人情報の取り扱いに関して文書と口頭で説明を行った上で研究協力の承諾を得た。【結果】 当クリニックでの心リハは、近隣の急性期病院で治療後の回復期、慢性期の患者が主である。複数の職種による包括的な心リハを目指し、教育指導と計画、目標の設定、カンファレンスを行っている。また、新潟地域の心リハ実施施設で心肺運動負荷試験(以下、CPX)を唯一導入しており、CPXの結果に基づいた運動処方が可能である。抗加齢医学外来に関しては、日常の診療で一次予防の概念を用いて、リハビリテーション対象患者以外に対しても必要に応じて、食事指導・運動指導・生活指導などを行い、日々の生活に役立ててもらっている。【症例紹介】 77歳、女性、1人暮らし、ADL全自立、家事・買い物なども自分で行っている。冠危険因子は、高血圧、脂質代謝異常。平成19年8月大動脈弁置換術施行(17mmSJM regent弁)。術前までは、卓球などを趣味で行っていたが、術後は、狭小大動脈弁置換術後であり運動負荷による致死的不整脈の発生の恐れがあると医師から説明を受け、運動はしないように遵守していた。平成23年8月現在、早歩きなどで息切れがあるが、休み休み生活すれば問題ない程度であった。定期受診時に、慢性心不全と診断される。心不全症状改善を目標に心リハ開始した。心リハ開始時、10回椅子立ち上がりテスト(以下、TST)=17.78秒、AT-VO2=11.0ml/kg/min peak-VO2=14.2ml/kg/minと加齢、不活発な生活によるものと考えられる筋力・運動耐容能の低下が見受けられた。主なプログラムは、ストレッチ、レジスタンストレーニング、ATレベルでのエルゴメーター等による有酸素トレーニングを行った。2ヶ月経過時点で、TST=15.19秒と改善傾向にある。心リハ終了時に、再度CPX検査を予定している。【考察】 現在、新潟地域で普及・啓発活動を行っているが、心リハの認知度は十分ではない。また、平成23年10月現在、新潟市内に7つある心臓カテーテル治療実施施設のうち、心リハを実施している施設は2つで、医師や看護師、理学療法士などの専門家からの運動指導などが少ないのが現状である。上記症例のように、心疾患の治療後、適応があっても心リハ非実施者が多い。どの程度の運動を行ってよいのか、趣味などは治療後継続できるのか、日常生活上の注意点は何かなど疑問を抱いたまま生活している方は多く存在することが考えられる。心臓手術・心臓カテーテル治療実施施設などの近隣病院と連携をとりながら、そのような患者をフォローできるような体制作りが今後の課題である。また、抗加齢医学と心リハの知識は共通することも多い。これらを日常の診療に取り入れて、より広い領域の知識を用い、健康増進の一助となるように指導が行える環境を整えていく必要がある。【理学療法学研究としての意義】 全国的にも、心リハを一般開業医として行っている施設は少ない。近隣の施設と協力しながら、理学療法士が活躍できる場は大いにあると考えている。今後、開業医の独自性という利点を生かし、理学療法・リハビリテーションを提供していくことにより、これらの分野が発展していき、より地域に貢献できるように研鑽を積んでいきたいと考える。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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