脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
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概要
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【はじめに】我々は第37回本学会にて、短下肢装具を使用している脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期との関連性について三次元動作解析システムを用いて分析を行い、立脚後期の重要性について報告した。今回は短下肢装具足継手の有無により2群に大別し、足継手が麻痺側立脚後期に及ぼす特性について考察を行ったため、報告する。【対象】対象は脳血管障害患者で、プラスチック式短下肢装具を使用し、屋内平地歩行が自立している者とした。足継手のない装具使用者(初期背屈角度2から3°)7名をA群(10m歩行時間:16.9±3.3sec、平均年齢:57.7±8.5歳)、タマラック継手付装具使用者5名をB群(10m歩行時間:12.4±2.6sec、平均年齢:56.4±21.8歳)とした。なお両群ともに股関節伸展・足関節背屈可動域制限5°以上の者、著明な高次脳機能障害を有する者は除外した。【方法】機器は動作解析システムLocus MA6250(アニマ社製・カメラ4台)を用い、サンプリング周波数60Hzにて5m間を日常用いている短下肢装具・杖を使用して自由歩行を行った。マーカーは頭頂、両側肩峰・股関節・膝裂隙・外果・第5中足骨頭の計11箇所とし、踵離地(heel off:H.O.)、足尖離地(toe off:T.O.)時のパラメーターの抽出とともに、非麻痺側歩幅・歩行率の測定、1立脚期間に対する麻痺側後方の両脚支持期間の割合を算出した。【結果】両群間で等分散の検定後、母平均の差の検定を行った結果、H.O.前後方向床反力(p<0.01)、重複歩時間・H.O.股関節屈曲モーメント・T.O.股関節屈曲モーメント(p<0.05)に有意差が認められた。また両群に対して10m歩行時間を説明変数として重回帰分析を行った結果、A群では-0.52×歩行率-1.86×T.O.股関節屈曲モーメント-0.14×H.O.股関節伸展角度+0.06×非麻痺側歩幅+58.79(決定係数:1.0、p<0.01)、B群では-0.14×歩行率-0.07×T.O.股関節伸展角度+25.9(決定係数:0.99、p<0.01)という式が得られた。【考察】立脚後期における装具の役割として、下腿を前方に傾斜することにより前方への重心移動を得て、円滑に離床を行うことが挙げられる。A群では構造上H.O.時に足関節背屈角度の増大を妨げ、前方への床反力が得られないために麻痺側後方の両脚支持期間の延長を引き起こしていた。また股関節屈曲モーメントを得ることが出来ないため、非麻痺側歩幅を増大させることにより股関節伸展角度を得て、T.O.時の股関節屈曲モーメントに頼った離床を行っていた。対してB群ではH.O.時に前方に床反力が作用するとともに股関節屈曲モーメントを生じるため、T.O.にかけて受動的な股関節伸展角度の増大により歩行率の向上を得ていた。【まとめ】脳血管障害患者で屋内平地歩行が自立しており、10m歩行時間が10秒台の症例における歩行速度の向上には、足継手付短下肢装具を使用して麻痺側立脚後期の円滑な離床を得ることが重要である。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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