能登地域の脳卒中リハビリテーションにおける回復期リハビリテーション病棟の現状と課題:─同地域医療機関との比較─
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概要
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【はじめに】 能登地域において,能登脳卒中地域連携協議会が設立され,脳卒中地域連携パスが運用されて4年目が経過しようとしている.年間670~680件の登録がされ,転帰・リハビリテーション関連情報などのデータが蓄積され,各方面での分析が可能となってきている.一方,能登地域での回復期リハビリテーション病棟は当院のみであり,脳卒中リハビリテーションにおいてはほぼ医療機関完結型という状況にある. そこで,能登地域の脳卒中リハビリテーションにおける当院の回復期リハビリテーション病棟の現状と課題について,他の医療機関と比較・分析を行い,若干の考察を加え報告する.【方法】 対象は平成22年度に発症した脳卒中者で,当院回復期リハビリテーション病棟にて脳卒中リハビリテーションを実施し退院した当院回復期リハビリテーション病棟実施群103名(男性52名,女性51名,平均年齢 75.1±10.3歳,脳梗塞 62名,脳内出血 26名,クモ膜下出血8名,その他7名),他の医療機関(5医療機関)にて脳卒中リハビリテーションを実施し退院した他医療機関実施群306名(男性165名,女性141名,平均年齢 75.5±11.0歳,脳梗塞 233名,脳内出血 49名,クモ膜下出血16名,その他8名)であった. 分析内容は自宅退院率,開始時FIM総得点,退院時FIM総得点,FIM利得,リハビリテーション実施期間,FIM効率について,当院回復期リハビリテーション病棟実施群と他医療機関群で比較した.リハビリテーション実施期間については対応のないt検定,自宅退院率はカイ2乗検定,その他のデータはMann-Whitney検定にて有意水準5%として処理した.【説明と同意】 本研究で採用したデータはすべて脳卒中地域連携パス適応者であり,パス適応にあたり,必要な情報交換を行うことやその情報をもとに集計・分析などが行われることを十分に説明し,同意の書類も取られている.【結果】 自宅退院率では当院回復期リハビリテーション病棟実施群 77.7%,他医療機関実施群 66.0%であり,2群間で有意な差があった.開始時FIM総得点および退院時FIM総得点では当院回復期リハビリテーション病棟実施群,他医療機関実施群それぞれ59.1±27.0点,68.8±38.3点,91.3±29.8点,86.0±40.0点であり,いずれも2群間で有意な差はなかった.FIM利得では当院回復期リハビリテーション病棟実施群 32.2±22.2点,他医療機関実施群 17.6±21.4点であり,有意に当院回復期リハビリテーション病棟実施群の方が高かった(p<0.01).またリハビリテーション実施期間では当院回復期リハビリテーション病棟実施群 89.5±47.0日,他医療機関実施群 51.2±43.8日であり,当院回復期リハビリテーション病棟実施群で有意に長かった(p<0.01).FIM効率では当院回復期リハビリテーション病棟実施群 0.45±0.37,他医療機関実施群 0.46±0.59であり,2群間で有意な差はなかった.【考察】 開始時FIM総得点および退院時FIM総得点,FIM効率では2群間で有意な差を認めなかったが,FIM利得,リハビリテーション実施期期間において2群間で有意な差を認めた.また自宅退院率が他医療機関実施群より当院回復期リハビリテーション病棟実施群で高かった.これより当院回復期リハビリテーション病棟実施群では他医療機関実施群に比し,ADL改善のために必要な時間を費やし,自宅退院率を高めていると考えられる. また今回は自宅退院率,FIM総得点,リハビリテーション実施期間を指標に比較を行ったが,このようなOutcomeに至った要因における人的資源や費やされた単位数などの影響についての検討も必要と考えられる.【理学療法学研究としての意義】 地域における脳卒中リハビリテーションにおいて,院内に止まらず,地域における自院の役割を理解し,検証作業を通じて,対象者にとってさらに有用な治療として還元していくことが重要と考えられる.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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