頭部外傷重症例に対する早期理学療法の検討:─救命センター専属配置の効果─
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概要
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【はじめに、目的】 2006年9月より当院高度救命救急センター(以下当センター)では理学療法士が専属配置した。また、2009年4月より、患者増に伴い理学療法士を増員し2名専属配置とした。これにより、早期より必要に応じた理学療法が可能となった。そこで頭部外傷重症例に対する早期理学療法の有効性及び当センターにおける理学療法士専属配置の効果を検討した。【方法】 2004年1月から2009年12月の期間に当センターに搬入された70歳以下、救命センター搬入時GCS 3~8点の頭部外傷重症例83例(死亡例を省く)を対象とした。専属配置前に加療した例(A群)、専属配置直後に加療した例(B群)、に分類し、年齢・性別・重症度(搬入時GCS)・人工呼吸器使用率及び人工呼吸器試用期間、理学療法開始までの期間・肺合併症の有無及び在院日数及び退院時転帰を比較検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 今回の調査内容については、当院規定の個人情報保護法に則って個人が特定できる情報は用いなかった。【結果】 年齢A群43±21歳・B群42±23歳、性別は男性がA群79%・B群67%、重症度はA群6.0±2.0・B群5.8±3.4でこれらに有意差は認められなかった。人工呼吸器使用率はA群97.6%・B群95.1%、人工呼吸器使用期間はA群8.1±7.0日・B群8.7±9.7日で有意差は認められなかった。理学療法開始までの期間は、A群10.7±5.7日・B群6.14±5.0日で専属配置により有意に早期から理学療法が開始された。肺合併症の割合はA群61%・B群49%で専属配置により減少傾向にあった。在院日数・退院時転帰には有意差は認められなかった。【考察】 頭部外傷例重度群における早期理学療法は、人工呼吸器管理・手術後のドレーン管理、また状態の変動及び1日数回の処置や検査等がなされる。そのため専属配置前では早期介入間困難であった。しかし、当センターに理学療法士を専属配置させた事により、医師・看護師・臨床工学技士等と連携が深まり、急変時の対応やチューブトラブルに留意し処置や検査の合間に、より早期介入が可能となった。また、頭部外傷重症例では、臥床による肺合併症やVAPを引き起こす可能性が極めて高い。この予防には肺理学療法、座位練習等の早期理学療法は有効とされている。しかし、これらの理学療法は、ハイリスクであるため多職種との密接な連携が不可欠で、専属配置前では施行困難であった。専属配置により多職種と連携し積極的且つ必要に応じた理学療法が可能となった。これらの事により、肺合併症率の低下が認められたと考える。しかし、在院日数や退院時転帰に関して有意差は認められなく、更に検討が必要と思われる。【理学療法学研究としての意義】 頭部外傷例重度群に対し早期理学療法は肺合併症予防に重要である。しかし、これらの理学療法は理学療法士単独による施行は極めて困難である。そのため、多職種と連携し早期且つ積極的な理学療法を施行するには療法士専属配置化は有効である。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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