Hopping能力と筋力との関係
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概要
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【はじめに、目的】 Hoppingは俊敏性の評価やACL損傷後の競技復帰基準として使用される。Hoppingに関する先行研究では、筋力と一定距離をHoppingで駆け抜ける時間(以下;Hopping能力)との関連性を検討したものが多く、Hopping能力と膝周囲筋力との関連性は低いというものが多い。筆者らは股関節屈曲筋力とHopping能力との間に高い関連性を報告したが、種類によっては動作に特異性があることも考えられ、不明な点も多い。そこで今回の研究の目的はHoppingと股関節・膝関節筋力との関連性について検討した。【方法】 下肢に整形外科疾患のない健常大学生27名(男性13名、女性14名、平均年齢21.03±0.83歳、身長165.03±7.85cm、体重60.44±11.65kg)を対象とした。各被験者に対して等速性股関節屈伸筋力・膝関節屈伸筋力測定および片脚HOPテストを実施した。測定下肢はボールをよく蹴る側の下肢とし、右脚25名、左脚2名であった。筋力測定にはBIODEXを用いた。測定する角速度は300deg/secで行った。各角速度で3回測定した上で、トルク体重比を算出した。(股関節屈曲筋力:HF、股関節伸展筋力:HE、膝関節屈曲筋力:KF、膝関節伸展筋力:KE)。片脚HOPテストの種類は「6mHOP」、「8の字HOP」、「小刻みHOP」の3種目とした。「6mHOP」では、6mを片脚にて駆け抜ける時間を記録した。「8の字HOP」は2.5m間隔におかれた椅子を、片脚で8の字で駆け抜ける時間を記録した。「小刻みHOP」は1.25m間隔に椅子を置き、8の字を描くように駆け抜ける時間を測定した。各テストは2回行い、時間の短い方を採用した。統計処理はSPSSver15(Windows)を使用して3種目のテストの測定値と各股・膝関節の屈曲・伸展トルク体重比間との間の相関をPearsonの相関係数を用いて有意水準は5%にて検討した。【倫理的配慮、説明と同意】 全対象者に対してヘルシンキ宣言にもとづき、事前に本研究の目的と方法を説明し、研究協力の同意を得た。【結果】 「6mHOP」:HF(-0.52**)HE(-0.52**)KF(-0.63**)KE(-0.48*)。「8の字HOP」:HF(-0.57**)HE(-0.60**)KF(-0.78**)KE(-0.64**)「スラロームHOP」:HF(-0.51**)HE(-0.51**)KF(-0.75**)KE(-0.61**)。(*p<0.05、**p<0.01)【考察】 股・膝関節筋力と3種目のHOPテストの間には関連性があった。西村らは「6mHOP」などの速度を計測するテストは筋力の影響を受けにくいと報告している。伊藤らは「8の字HOP」において膝筋力との関係性が殆どなかったと報告している。西村らの報告は一定以上の筋力を有したスポーツ選手を対象としており、伊藤らは比較的遅い角速度で測定しており、今回のような速い角速度ではなかった。今回測定したすべての筋力との間に関連性を示したことから、一般的な大学生を対象とした場合、速い角速度での筋力が高いほどHOP能力が高い傾向にあると示唆される。「小刻みHOP」は股関節筋力よりも膝関節筋力の方がより関連性が強い傾向にあった。一定スピードを保ったまま複数回のstepを繰り返すには膝屈曲位での接地を繰り返す必要がある。特に膝屈曲筋力との関連性が強かったことは、ハムストリングスによる膝関節への安定化と股関節伸展筋力補助が同時に行えて、小刻みなステップを安定して行える能力に寄与したと考えられる。「8の字HOP」は筋力との関連性が最も強い傾向にあった。これは短時間のうちに減速と加速を要求する場面の両方が存在するため、他の二種目と比較して筋力を必要としたと考えられる。加速場面ではキック期後半からスイング期に股関節屈曲筋力が活動しているとの報告や、ハムストリングスの影響が大きいとの報告もある。減速場面では、膝伸展筋や大殿筋による衝撃吸収が、体幹の前方回転防止の為大腰筋やハムストリングスの体幹安定化機能が重要になると推測される。速い角速度での筋力発揮能力が高いものほどこれらの要求に答えることができ、関連性が強くなったものと考えられる。【理学療法学研究としての意義】 速度を測定するテストと筋力の関連性は低いとされていたが、一般的な大学生では筋力によって能力に差があることが分かり、パフォーマンスを向上させるには初期に筋力強化を中心に展開する必要性が明らかにされた。特に競技によってはstepを多く含むものは膝関節屈曲筋力の重要性が明らかとなった。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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