可搬型軽量床反力計の開発
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概要
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【目的】 床反力計は,ヒトが重力に抗して動作を行う際に床と足部の間に作用する力(反力)を測定できる。この反力を測定することで,ヒトが動作でどの方向に,どの程度の力を発生させているのか明らかにできる。現在,市場に出ている床反力計は体重の数倍の荷重量を測定することが可能なものであるが,高額である。かつ,大半が設置型であり,g単位の荷重が記録できない。そこで今回はg単位の荷重を計測可能となる床反力計を開発したので,その計測精度について検討を加え,報告する。開発の目的は乳幼児の立ち上がりや歩行等を測定することである。【開発した床反力計の特徴】 我々が開発した床反力計(TF-3040-A:テック技販)の最大の特徴は,乳幼児の立ち上がり動作や歩行動作だけの解析を目的にg単位の荷重に焦点を当て計測レンジを設定した点にある。そこで,垂直成分方向(Z軸方向)の耐荷重を1000Nに設定し,床反力計の表面の鉄板強度を設定した。そのうえで,薄さ2.5cmのひずみゲージ式3分力計(テック技販製)を床反力計の4隅に設置し,できる限り床反力計の厚みを減らすよう開発を依頼した。開発した床反力計はテック技販内での実荷重試験を行い,精度を検証した。ちなみに,開発した床反力計のサイズは縦40cm×横30cm×高さ5cm(アジャスター調整付)で,重量は7kgである。床反力計の垂直成分方向の荷重は300N・600N・1000Nの3段階に設定することができる。【方法】 開発した床反力計でg単位の荷重を記録できることを確かめるため,床反力計の中心部に重量1kgの砂嚢を置いた。高さ55cmに設置した滑車から吊るしたひもで砂嚢を固定し,ひもの反対側に固定した重量0.5kgの砂嚢を高さ30cmの位置から下方に10cm落下させた。この作業を通して,床反力計の中心部に置いた砂嚢が垂直成分方向に発生させる分力を算出した。計測は10回試行し,計測レンジを300Nに設定し,100Hzでサンプリングした。計測したデータは,専用の解析ソフト(テック技販製)で記録した。そして,砂嚢が床反力計の中心部に乗っている状態(T1),重量0.5kgの砂嚢に引き上げられ最低値を記録した地点(T2),引き上げられた砂嚢に反発して生じた反力が最大値を記録した地点(T3)と両者の砂嚢が平衡を保った地点(T4)の値を抽出した。そして,これらのデータをSPSS(ver16)にて平均値および標準偏差を求め,計測精度を確認した。【倫理上の配慮】 本研究は,ヒトや動物を対象とした研究ではないので,倫理的な問題はないと判断した。【結果】 開発した床反力計の分力はT1では10.04±0.23N,T2では-0.50±0.12N,T3では 14.24±1.87N ,T4では4.86±0.23Nとなった。T3のみ標準偏差が約2Nとなったが,それ以外の計測地点では計測された値のばらつきも少なくなかった。【考察】 今回,砂嚢が垂直成分方向に発生させる分力を4地点で計測しその平均値を算出したが,各試行で記録された値はほぼ均一であった。今回の結果より,開発した可搬式計量床反力計はg単位の荷重の記録をより正確に計測できることが可能であった。【理学療法学研究としての意義】 今回開発した床反力計は,軽量可搬型であるにもかかわらず,g単位の荷重の記録を正確に計測できることを確認した。このことで,臨床現場に計測機材を容易に持ち運び,乳幼児の立ち上がりや歩行動作などの目的となるデータを得ることができる。このような研究活動の実施により,乳幼児の運動発達メカニズムをさらに深く吟味することができるものと思われる。 【謝辞】 本研究は,平成22年度御器谷科学技術財団より研究助成を受け実施したものである。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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