健康日本21地方計画策定支援を目的とした地域診断ツールの開発
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概要
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目的 健康日本21の市区町村計画策定を支援するために,危険因子への介入による死亡率低下予測が可能な地域診断ツールを開発する。<br/>方法 地域における死亡率低下割合の予測に必要な相対危険度と回帰係数を算出するために,茨城県健診受診者生命予後追跡調査のデータを用いて,1993年度の基本健康診査を受診した40歳~69歳の男性25,201人,女性51,776人を対象とし,2002年までの死亡を追跡した。総死亡率,全循環器疾患死亡率,脳血管疾患死亡率,虚血性心疾患死亡率,全がん,および肺がん死亡率に対する喫煙(吸う),多量飲酒 (1 日 3 合以上),肥満(Body Mass Index: BMI≧30),高血圧(収縮期≧160 mmHg,拡張期≧100 mmHg,高血圧治療中),高コレステロール(240 mg/dl 以上,ただし50歳以上の女性は260 mg/dl 以上,高脂血治療中),低 HDL コレステロール(35 mg/dl 未満),糖尿病(空腹時126 mg/dl 以上,非空腹時200 mg/dl 以上,糖尿病治療中)の相対危険度を Cox 比例ハザードモデルにより算出した。また,BMI,収縮期血圧,総コレステロール,HDL コレステロール,血糖について,二次項を含めた Cox 比例ハザードモデルにより回帰係数を算出した。これらの結果を基に,効果分画により,危険因子の変化による死亡率低下割合が予測可能なツールを Microsoft EXCEL を用いて開発した。<br/>成績 本ツールの開発により,地域での現在の危険因子保有者の割合(曝露人口割合),平均値・標準偏差と目標とするそれらの値を入力することにより,その目標を達成した場合の死亡率の低下割合をシミュレーションできるようになった。本研究の対象集団において,各危険因子の保有者割合が半減した場合,および各検査値の分布が変化した場合の死亡率の低下割合を推定した結果,喫煙率が半減した場合,男性では総死亡率が10%低下する可能性が示された。高血圧者の割合が半減した場合,男性では全循環器疾患死亡率が12%,女性では11%低下する可能性が示された。また,収縮期血圧の平均値を10%低下させた場合,男性では全循環器疾患死亡率が22%,女性では18%低下する可能性が示された。<br/>結論 本ツールは,都道府県と市区町村が連携して地域診断を推進するための,一つのツールとなり得る。
- 日本公衆衛生学会の論文
著者
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高橋 秀人
筑波大学大学院人間総合科学研究科(医学)
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高橋 秀人
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻
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野田 博之
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻社会健康医学
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磯 博康
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻社会健康医学
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西連地 利己
財団法人茨城県総合健診協会茨城県立健康プラザ
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入江 ふじこ
茨城県保健福祉部保健予防課
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深澤 伸子
財団法人茨城県総合健診協会茨城県立健康プラザ
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大田 仁史
財団法人茨城県総合健診協会茨城県立健康プラザ
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能勢 忠男
財団法人茨城県総合健診協会
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山岸 良匡
筑波大学大学院人間総合研究科社会環境医学専攻社会健康医学
-
野田 博之
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻社会健康医学分野
-
磯 博康
筑波大学大学院人間総合科学研究科社会環境医学専攻社会健康医学分野
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