SLE皮膚における免疫病理学的所見の経時的変化について
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概要
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SLE 患者16例について,治療前と治療により症状が軽快~消失しコントロールされていると判断された時点の前後2回の皮膚生検を行い, lupus band test(LBT)を施行した.治療による LBT 陽性率の経時的変化は,皮疹部では83.3% から14,3% へ,被覆部の背部より採取した無疹部では75.0% から25.0%へ低下した.無疹部における治療前後の LBT 所見の変化により,3群に大別された.すなわち,I 群: LBT 陰性化群8例,Ⅱ群: LBT 陽性持続群4例,Ⅲ群: LBT 陰性持続群4例であった.3群全16例の無疹部LBTの経時的変化と白血球数,LE 細胞,抗核抗体,補体(CH50 ,C3 , C4),尿蛋白などの変動との明確な相関関係は認められなかった.治療前に LBT 陽性の I 群,II 群においては,腎生検の結果,全例に腎病変が認められた.また, active form の腎病変を有する症例群の方が, mild form の腎病変を有する症例群より,LBT 陽性率が高かった.U群の腎病変は active formであり,Ⅲ群は mild form であるか,または腎病変は存在しなかったこのように LBT 所見が持続固定している症例では LBT の経時的変化と腎病変の重症度との間に相関が認められた.群別にみると,II 群は平均年齢が高く,多くの臨床症状を呈し,短期間に多量のステロイドホルモン剤が必要で,維持量も多かった.I 群は,平均年齢では3群中最も低く,各症例で治療期間に幅がみられた.Ⅲ群の平均年齢はI群とII群の中間にあり,治療期間の平均ではI群と差がなく,各症例間の差もあまりなかった.また同群のステロイドホルモン剤の使用総量の平均は,I群とほぽ同じであるが,初回量,維持量は3群中最も少量であった.全症例を年齢の点からみると,若年者では,治療経過は不定であるが,LBT は陰性化あるいは陰性持続の傾向が示唆された.また,比較的高年齢者は, LBT が持続固定する傾向があり,そのうち陰性持続群は,若年者と同様に経過は長いが,腎病変はmild form の傾向があり,陽性持続群は,短期間に大量のステロイドホルモン剤を必要とし,腎病変も active form の傾向があると示唆された.以上より, LBT,特に被覆部背部無疹部での LBT は SLE の病態,活動度を把握する上で,絶対的指標とはなり得ないが,症例によっては,重要な指標であり,臨床症状や他の検査所見と総合して判断する上では,1つの重要な検査法と考えられた
- 公益社団法人 日本皮膚科学会の論文
著者
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風間 敏英
昭和大学医学部皮膚科学教室
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末次 敏之
昭和大学医学部皮膚科学教室
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森川 孝雄
昭和大学医学部皮膚科学教室
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田中 洋子
昭和大学医学部皮膚科学教室
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石橋 芳男
昭和大学医学部皮膚科学教室
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志和池 成世
同第一内科学教室
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杉崎 徹三
同第一内科学教室
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伊藤 正吾
同第一内科学教室
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米倉 正博
同第一内科学教室
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佐藤 滋
同第一内科学教室
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北沢 孝三
同第一内科学教室
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山本 純
同第一内科学教室
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