下肢の小切断部位から見た同側下肢喪失の危険因子に関する検討
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概要
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【はじめに、目的】足部切断を施行した患者は術後3年以内に49.1%が同側下肢の再切断に至ること 、また術後再切断のおよそ70%は3カ月以内に行われていることが報告されている( Kono et al., 2012 )。下肢喪失の危険因子としては、アルブミン低値、潰瘍、CRP高値、切断の既往が指摘されているが、足部の小切断部位と下肢喪失の関連については詳細な検討がなされておらず、小切断術後患者の下肢喪失危険因子についても十分な検討が行われていない。そこで本研究では、小切断術後90日以内(亜急性期)の小切断部位から見た同側下肢喪失率と、小切断術後の下肢喪失危険因子を検討することを目的とした。【方法】本研究では2003年4月から2011年12月に小切断術を施行した197名233肢の連続症例のうち、193名222肢を解析対象とし電子カルテを用いて後方視的調査を行った。除外基準は小切断の術中及び術後1週間以内の死亡、血行再建術非施行、初回 切断日・下肢喪失日不明とした。調査項目は性別、年齢、身長、体重、透析期間、併存疾患、既往歴、生化学情報、切断部位および小切断術後90日以内の切断日、死亡日、ABI ( Ankle Brachial Index )、術後残存・新規形成潰瘍の有無とした。小切断部位により足趾切断群、TMA ( Transmetatarsal amputation : 中足趾節間切断) 群に分類し、Kaplan-Meier生存曲線を用いて下肢喪失率を算出し、log-rank testで比較を行った。下肢喪失に対する危険因子はCox比例ハザード分析を用いて検討を行った。【倫理的配慮、説明と同意】本研究は生命倫理審査委員会および調査実施施設臨床研究委員会の承認を得て行った。本研究実施に際し入手した対象者情報は連結可能匿名化を行い、個人を特定できない状態で管理を行った。データベースは本研究のみに利用し、統計解析は所属大学にて研究室所有のパソコンにて行った。また解析期間中は、保存電子媒体に暗証番号を設定して研究関係者のみがデータを閲覧できる状態を維持した。【結果】小切断術後90日以内の足趾切断群、TMA群の下肢喪失率はそれぞれ3.3%、25.0%で、TMA群は足趾切断群と比較して有意に下肢喪失率が高かった( log-rank test : p<0.01 )。また亜急性期の下肢喪失の危険因子はTMA (ハザード比[HR], 9.32, 95%信頼区間[CI], 1.58-54.93, p=0.01 )、アルブミン ( HR, 1.75 ; 95%CI, 1.19-2.57 ; p<0.01 )、CRP ( HR, 1.18 ; 95%CI, 1.05-1.33 ; p<0.01 ) であった。【考察】切断術後90日以内においてTMA患者は足趾切断患者と比較して有意に下肢喪失率が高いこと、TMAは下肢喪失の独立した危険因子であることが確認された。小切断術後5年時点の下肢の予後を調査した先行研究にてTMAは下肢喪失の独立した危険因子であることが指摘されているが、亜急性期においても同様の結果が得られることがわかった。また多変量解析の結果、アルブミン、CRP、 TMAが下肢喪失の危険因子として検出された。先行研究よりアルブミン、CRPは下肢喪失に影響を与える因子であることが報告されているが、本研究においても先行研究と同様の傾向が認められ、TMAはアルブミン、CRPに並ぶ危険因子であることが明らかとなった。【理学療法学研究としての意義】本研究で得られた所見は、小切断術後患者に対する理学療法の介入方策立案に際し、適切な目標設定を行うために役立つものと考える。亜急性期において、TMAは足趾切断と比較すると有意に下肢喪失率が高いことから、TMA患者に対しては術後早期より下肢喪失リスクを考慮した目標設定が必要であることが示すものと考える。また、亜急性期の下肢喪失の危険因子としてTMA、アルブミン、CRPが検出されたことから、小切断術後の患者に介入を行う際にはTMA、アルブミン低値、CRP高値の影響を考慮する必要があると考える。TMA患者が下肢喪失に至る原因については今後詳細な調査を行い、具体的な的介入方策を検討したい。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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