当院亜急性期病棟の5年間の現状と課題
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概要
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【目的】当院は病床数745床を有する市内の中核を担う急性期病院で、2004年10月に病床数40床(現在36床)の亜急性期病棟を開設し、5年経過した。当院亜急性期病棟では、転入前に主治医が転帰予定日・転帰先の決定をしている。転入後は、計画的な機能回復・退院ために、亜急性期病棟用クリニカルパス作成によるスタッフ間の情報共有とゴール設定、アウトカムを意識したカンファレンスの実施等を行っている。今回、5年間の亜急性期病棟業務データの分析と亜急性期病棟に関わる職員のアンケート調査を行い、当院亜急性期病棟の現状と課題について報告する。<BR>【方法】2004年10月から2009年9月末までの5年間当院亜急性期病棟に入退院した患者2537例(男性795例、女性1742例、平均年齢63歳)を対象とし、Microsoft社のAccessを用い、亜急性期病棟患者・業務管理データより紹介科・疾患名・手術名・在院日数・転帰先・在棟日数・在宅復帰率・転帰予定日と実際の転帰日との差・PT1人1日当たりの平均実施単位数などを調査分析した。また2009年10月亜急性期病棟スタッフ38人にやりがい・身体機能や日常生活動作能力の向上の見込み・スタッフ間の情報伝達等のアンケート調査を実施した。<BR>【説明と同意】ヘルシンキ宣言に基づき、対象者に研究の目的を説明した上、承諾を得たのち実施した。<BR>【結果】亜急性期病棟の紹介科の割合は整形外科77%、リウマチ科18%、脳外科・神経内科4%、その他1%であった。疾患別では、変形性関節症823例、骨折584例、ACL損傷251例、肩腱板損傷167例、脳血管疾患108例、その他604例であった。手術別では、THA519例、TKA506例、観血的整復固定術408例、ACL再建術251例、肩腱板損傷修復術167例、その他手術506例であった。転帰先は、自宅退院74%、転院22%、福祉施設1%、他病棟転出3%であった。平均在棟日数は、2004年度26日、2005年度25日、2006年度26日、2007年度25日、2008年度25日、2009年度27日であった。月別での差はなかった。平均在院日数は、2004年度47日、2005年度46日、2006年度46日、2007年度44日、2008年度45日、2009年度45日であった。在宅復帰率は、2004年度67%、2005年度73%、2006年度78%、2007年度74%、2008年度79%、2009年度76%であった。転入時の転帰予定日と実際の転帰日との差の平均は、2004年度-2.5日、2005年度-1.6日、2006年度-1.3日、2007年度-1.9日、2008年度-1.7日、2009年度-1.8日であった。PT1人1日当たりの平均実施単位数は、2004年度17.7、2005年度17.7、2006年度21.2、2007年度21.2、2008年度20.9、2009年度20.2であった。<BR> 亜急性期病棟スタッフのアンケート調査結果(回収率95%)で、「やりがい」は、すごく感じる20%、やや感じる51%、どちらでもない23%、あまり感じない6%、全く感じない0%であった。「一般病棟より身体機能や日常生活動作能力の向上が見込める」は、非常に思う78%、やや思う14%、どちらでもない5%、あまり思わない0%、全然思わない3%であった。「PT・OTからの患者情報伝達」は、非常にうまく伝わっている9%、ややうまく伝わっている37%、どちらでもない37%、あまりうまく伝わっていない17%、全然伝わっていない0%であった。<BR>【考察】当院亜急性期病棟は、整形外科系疾患が多く、そのため術後患者のリハビリの割合が多い特徴を有している。5年間の平均在宅復帰率は、74.5%と高い復帰が達成され、また転入時転帰予定日と実際の転帰日との差の5年間の平均は、-1.8日と概ね予定通り達成できている。5年間のPT1人1日当たりの実施単位数は、20単位とかなりの労力を使って患者にアプローチができていた。アンケートの結果からも、スタッフの業務に対するやりがいが高いことや一般病棟よりもリハビリテーションに対する自信があることが伺えた。このことからクリニカルパスによる情報共有とゴール設定、アウトカムを意識したカンファレンスの実施、手厚い理学療法、スタッフの積極性等が、当初目標とした計画的な機能回復・ADL改善・在宅復帰を達成していると考えている。<BR> しかし情報伝達の不備が多少あるなどの問題点がみられたので、今後情報伝達のさらなる工夫の取り組みが必要と考えている。<BR>【理学療法学研究としての意義】亜急性期病棟の維持・発展のためは、亜急性期病棟患者・業務管理データの蓄積と資料としてのデータ公表や定期的なスタッフの意識調査による問題点の抽出も重要であると考えている。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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