養成課程が与える「障がい」に関する印象の変化についての研究
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】<BR> 本学リハビリテーション学科入学から卒業までの養成課程期間に「障がい」に対して学生がどのようなイメージを持ち,またどのように変化したかを形式化し,若干の知見を得たので報告するとともに,養成課程が抱える問題解決の一助とする.<BR>【方法】<BR> 本学リハビリテーション学科は3年課程の養成校である.3年間の養成課程を学内での履修と学外の履修(臨床実習)とに大きく区分した.平成21年度に卒業を迎える本学リハビリテーション学科11期生36人(入学時41人)と,平成22年度卒業を迎えるリハビリテーション学科12期生29人(入学時31人)の2つのグループを対象とした.11期生をI群,12期生をII群とし,I群はH19.4.入学時とH21.10.養成課程修了時の2回,II群はH20.4.入学時とH21.10.ほぼ学内での課程を修了し臨床実習を控える時点の2回,5~6人の無作為なグループを作り,KJ法などで用いられるブレーンストーミングにより「障がい」をキーワードにカードの作成を実施した.作成したカード内のキーワードをICFに領域分類に整理集計をしてその割合を算出した.<BR>【説明と同意】<BR> 当該在学生に対し入学時にさかのぼり,それぞれの時点で作成したカードに対して,研究目的での使用の同意とともに所属する本学園倫理委員会で承認された.<BR>【結果】<BR> I群は1年次H19.4.に180のカードを作成.カードはICFの領域に従い,心身機能・身体構造76(42.2%)活動24(13.3%)参加4(2.2%)環境因子50(27.8%)個人因子9(5.0%)その他17(9.4%)、3年次H21.10に79のカードを作成.同様に心身機能・身体構造9(11.0%)活動8(9.8%)参加10(12.2%)環境因子31(37.8%)個人因子11(13.9%)その他13(15.9%).II群は1年次H20.4.に124のカードを作成.同様に心身機能・身体構造50(40.3%)活動13(10.5%)参加6(4.8%)環境因子39(31.5%)個人因子6(4.8%)その他10(8.1%)、2年次心身機能・身体構造11(13.8%)活動9(11.3%)参加2(2.5%)環境因子36(45.0%)個人因子5(6.3%)その他17(21.3%)であった.<BR>【考察】<BR> 養成課程を履修前(1年次4月)臨床実習前(2年次10月)履修後(3年次10月)の3つの時点で区別し,学生の内面にある「障がい」というテーマに対するイメージの変化をみた.履修前(1年次4月)は,「障がい」を心身機能・身体構造(機能形態障害)ととらえる傾向が強い.心身機能・身体構造(機能形態障害)は,卒業時までに減少傾向をたどるが学内での養成課程においてその割合は激減することがわかる.一方,学内の履修課程を経た時点において大きく変化のなかった参加(参加制約),個人因子に関わるキーワードが,臨床実習を契機に有意に増加する.実際に患者様や対象者様という人と接することにより,学生自身が対象としている方が,個別に存在するのではなく社会の中に生きるものとして捉えることを臨床実習で実体験することによるものと推測する.<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>今回の結果は,現状の学内の履修課程(臨床実習前)だけでは,障害を多角的にみることを学習することが困難である.具体的には,参加(参加制約)ならびに個人因子に関わるキーワードをあげる知見が十分に習得していないことを示唆するとともに,臨床実習での経験が学生に大きく影響することを示唆している.言い換えるならば、臨床実習という単位の中で,参加(参加制約)・個人因子まで理学療法の対象であり、評価できる視野を持つことを学習目標として啓示しなくては,養成課程の中で参加(参加制約)・個人因子を理学療法評価項目の視点にあげることができない理学療法士を養成する危険性を孕んでいるというものとなった.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―