COPD患者における6分間歩行試験中のSpO2の変化と肺機能の関連性について
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概要
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【目的】<BR> 現在、COPDの重症度分類としてGOLD重症度分類が使用されており、これは安静時肺機能検査の結果を反映したものである。ところが、COPD患者では安静時よりも運動時の症状が特徴的であり、中でもSpO2の低下がしばしば見受けられる。今回、診断基準の指標であるFEV1.0%、重症度分類の指標である%FEV1.0と6分間歩行試験(6MWT)中のSpO2の低下の関連性について検討することを目的として研究を実施した。<BR>【方法】<BR> 対象は6分間連続歩行が可能な男性COPD患者とし、歩行試験中に酸素療法を必要とする者は本研究より除外した。測定項目は肺機能検査、6MWT中の経皮的動脈血酸素飽和度(以下、SpO2)、脈拍(以下、PR)、6分間歩行距離(以下、6MWD)である。6MWTはATS のガイドラインに準ずるものとしたが、施設設備の関係上、コースは一周30mのトラックにて実施した。6MWT中のSpO2、PRの測定にはWristOxTM6MW(スタープロダクト社製)を使用し、専用ソフトにて解析した。SpO2、PRの測定は試験開始前3分、試験中6分間、試験終了後3分を安静として計12分間記録した。SpO2の解析には低下量、{(安静時SpO2-歩行試験中の最低SpO2)/安静時SpO2}×100で求められた低下率を採用した。肺機能検査の項目はFEV1.0%、%FEV1.0、%FVCを解析の対象とした。統計学的解析にはSpO2と肺機能の関連性についてSPSS statistics 17.0を使用し、Spearmanの順位相関係数を用いて解析を行った。なお、有意確率は5%未満とした。<BR>【説明と同意】<BR> 研究実施前にあらかじめ対象者に研究の主旨と方法、予想される危険性、同意はいつでも撤回可能であること、個人が特定されないように情報管理をするということについて説明し、同意を得た上で研究を開始した。<BR>【結果】<BR> 対象はCOPD患者21例(平均年齢:74.2±6.9歳、重症度分類I:3例、II:8例、III:8例、IV:1例、V:1例)であった。歩行距離は314.5±102.2m、FEV1.0%は59.7±20.0%、%FEV1.0は91.3±25.6%、%FVCは89.5±32.0%であり、SpO2の低下量は7.5±4.1%、低下率は7.8±4.4%であった。各肺機能とSpO2の低下量、低下率の関連性についてFEV1.0%、%FEV1.0、%FVCともSpO2の低下率と有意な相関関係を示さなかった。<BR>【考察】<BR> COPD患者を対象に6MWT中のSpO2の変化と肺機能の関連性について検討した。各肺機能とSpO2の低下は相関関係を示さなかったことより、安静時の気道閉塞による換気制限と運動時のSpO2の低下とは関連性がないと考えられる。このことからGOLD重症度分類のみで患者の状態を評価するのではなく、運動時のSpO2も合わせて評価することが重要であることが示唆された。また、今回は安静時肺機能を比較対象としたが、今後は運動時の肺機能を比較対象として検討をしたい。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR>運動時の症状が主であるCOPD患者の重症度の判断を安静時の肺機能から求めるGOLD分類のみに頼るのではなく、運動時の生理的反応からも判断することが重要であることが示唆された。今後、COPD患者における運動時のSpO2についてさらなる検討を行う必要がある。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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