ACL再建術後の再受傷症例と反対側受傷症例の比較
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概要
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【目的】<BR> 前十字靭帯(Anterior Cruciate Ligament:以下ACL)再建術後に再受傷または反対側のACL断裂を受傷する症例を経験する。当院においては、2005年1月から2008年8月の間にACL再建術を施行した537例中、再受傷が18例、反対側受傷が26例認められた。そこで、本研究の目的はACL再建術後の再受傷、反対側受傷例について調査し、その特徴を知ることである。<BR>【方法】<BR> 対象は2005年1月から2008年8月の間にACL再建術を施行した537例のうち、術後1年以上経過観察が可能であった332例を対象とした。性別は男性162例、女性170例、平均年齢は25.4±9.3歳、術後経過観察期間は平均18.2±5.0ヶ月であった。1年以上経過観察可能であった332例を再断裂および反対側断裂を受傷していない非受傷群と再受傷群、反対側受傷群の3群に分類した。検討項目は性別、年齢、スポーツ種目、再受傷・反対側受傷の受傷時期、術後6ヶ月と9ヶ月における筋力評価とした。筋力評価はBIODEX社製BIODEX system3を用いて体重支持指数(以下WBI)、角速度60度での等速性膝伸展・屈曲筋力(%BW、H/Q比)を測定した。統計学的分析はSPSS 12.0 J for Windowsを用い、一元配置分散分析 Scheffeの多重比較を行った。有意水準は5%とした。 <BR>【説明と同意】<BR> 本研究は当院倫理委員会の承諾を得て実施した。<BR>【結果】<BR> 非受傷群は312例で平均年齢25.8±9.1歳、男性158例、女性154例、再受傷群は8例で平均年齢19.1±12.2歳、男性1例、女性7例、反対側受傷群は12例で平均年齢は17.8±3.4歳、男性3例、女性9例であった。非受傷群、反対側受傷群間で反対側受傷群が平均年齢において有意に若かった。スポーツ種目は3群ともにバスケットボールが最も多かった。受傷時期は再受傷群平均15.0±7.9ヶ月、反対側受傷群は平均16.2±5.1ヶ月であった。筋力評価において非受傷群、再受傷群、反対側受傷群の3群間での比較では健側、患側ともに有意差は認められなかった。<BR>【考察】<BR> 以上の結果から再受傷群、反対側受傷群ともに女性バスケットボール選手の受傷が多かったことから、女性バスケットボール選手での経過観察には注意が必要であることが示唆される。また今回の結果からH/Q比と再受傷、反対側受傷との関係性が示唆されなかった為、ACL再建術後の再受傷症例と反対側受傷症例の特徴を捉えるためには詳細な評価が必要である。<BR>【理学療法学研究としての意義】<BR> 臨床においてACL再建術後に再受傷または反対側受傷する症例を経験する。しかし、過去の報告においてACL再建術後の再受傷または反対側受傷症例の特徴についての報告は散見される程度であり、十分な見解が得られているとは言い難い。さらに、非受傷群、再受傷群、反対側受傷群の3群間での報告を行っているものはほとんど見られない。そこで今回の研究においてACL再建術後の再受傷または反対側受傷症例の特徴を理解することで、ACL再建術後の症例に対し的確な指導ができ、再受傷・反対側受傷の発生率の減少へとつながるのではないかと考えられる。
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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