インタープロフェッショナル教育(IPE)における「総合ゼミ」の実践と評価
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概要
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【背景】近年、英国を中心に、医療サービス提供者間の連携の確立を目的として、学生の段階から「連携」に対する意識を高め体験を積ませるという多職種間連携教育(Interprofessional Education:IPE)の重要性が指摘されている.一方、日本の理学療法の果たす役割は、保健・医療・福祉とますます多様化し、多職種との連携能力はサービス提供者として必要不可欠な資質となっている.医療系の総合大学である本学では、質の高いQOL (Quality of Life)サポーターの養成を目指し、1年次の導入教育から4年次の総合ゼミにいたるまで,保健・医療・福祉の現場で必要とされるチームワークがスムースに取り組めるように教育内容を開学以来設定してきた.受講生はが自らの所属学科の専門性を踏まえつつ、他学科の専門性を十分に理解し、評価・アセスメントに始まり支援計画の立案に至るチーム医療を模擬的に体験することで、他の専門職と連携に対する基本的な方法や内容を修得する.<BR>【目的】本報告では2005年より行われてきた本学の総合ゼミを紹介し、2008年の実施内容と学生評価の結果を紹介する.<BR>【実施内容】総合ゼミは2005年度からの試行期間を経て2008年度からは1単位・選択科目となり,医療,健康指導,リハビリテーション,社会生活の4領域で6事例のシナリオを作成し,72名の学生を9班に分け,事例の評価から総合的な支援計画の立案までを実施した.<BR>【方法】受講学生に対して総合ゼミの開始時と終了時にアンケート調査を実施した.調査は教育評価にのみ使用することを口頭で説明し同意を得た.有効標本数は59名(回答率81.9%)であった.前後の比較には対応のあるt検定を用いた.<BR>【結果】質問項目は以下の6項目であった.(1)自分の専攻する専門職への理解度(2)他職種や職域への理解度(3)将来、他の専門職と協力して働く可能性(4)取り組んだテーマに対する知識・理解度(5)チームを組んでテーマ解決することの重要性(6)他班が取り組んだテーマに対する知識・理解度.その結果、(3)の他専門職との協労の可能性について有意差が認められなかったが、そのほかの5項目については有意な差が認められた.多職種の理解、関わったテーマに対する理解も深まったという結果をえて、科目選択した意欲の高い学生で構成された本年の総合ゼミの教育成果は実証されたと考える.<BR>【今後の課題】(1)学生が多職種間の共通言語(用語)、知識、認識を理解し、作業をするまでに要する多くの時間を教材準備、教授法で短縮できるか(2)必修科目とした場合、全学生・全教員の興味・関心を引きつけ教育成果を高めることができるか(3)ファシリテーターの育成が急務である、などが今後の課題としてあげられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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