超音波照射が血流と自律神経機能へ与える影響
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概要
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【目的】<BR> 超音波療法が生体に与える影響として,三宅らは腰背部への超音波照射による深層軟部組織近傍の細動脈の血流変化について報告している.しかし,血流動態と自律神経機能を検討した報告はない.本研究の目的は,腰部への超音波照射が血流動態と自律神経機能へ与える影響を検討することである.<BR>【方法】<BR> 対象は健常成人20名とし,実験の趣旨を説明し同意を得た.対象者を,超音波照射群10名(US群),プラセボ群10名(P群)の2群に無作為に振り分けた.照射は伊藤超短波社製超音波治療器US-750を用い,振動子はLタイプを使用した.US群には,周波数1MHz,出力1.5W/cm<SUP>2</SUP>,連続照射5分間とし,L4/5棘突起間より左側5.0cmを中心にストローク法にて超音波を照射した.P群では無出力とし施行した.自律神経機能は,日本コーリン社製血圧脈波測定装置にて心電図R-R間隔変動係数(以下CV<SUB>R-R</SUB>)を測定した.血流測定は,東芝社製超音波診断装置Aplio XGを使用し,L4/5棘突起間より5.0cmの傍脊柱部,皮膚表面より約2.5~3cmの深部細動脈を同定し,最高血流速,拡張末期最低血流速,平均血流速,抵抗係数,拍動係数を測定した.なお,各項目の測定は施行前後に実施した.統計学的処理はWilcoxonの符号付順位和検定を用いた.<BR>【結果】<BR> US群では照射前と比較し,最高血流速,平均血流速,CV<SUB>R-R</SUB>において有意な増加を認めた.P群では測定項目に有意な変化を認めなかった.<BR>【考察】<BR> US群においてCV<SUB>R-R</SUB>の増加より,交感神経系が抑制され副交感神経系が優位になったと考えられる.血流速度が増加したにもかかわらず,抵抗係数・拍動係数に変化が見られなかった事から血管径の増大および血流量増加の可能性が考えられる.超音波療法は,副交感神経系を賦活し腰部深層軟部組織近傍の細動脈の血流が増加することが示唆された.<BR>【まとめ】<BR> 腰部への超音波照射が血流動態と自律神経機能へ与える影響を検討した.超音波照射により最高血流速,平均血流速,CV<SUB>R-R</SUB>の増加を認め,副交感神経系の賦活,血管径の増大および血流量の増加が示唆された.今後,有疾患者に対する治療効果の検討が必要と考えられる.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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