「介護予防を目的とした筋力向上トレーニングロボットシステム」の介入効果
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概要
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【目的】我々は、NEDOからの助成により産官学共同で開発した「介護予防のための筋力向上トレーニングロボットシステム」の実用研究を進めている.本システムの特長として、1)下肢ではレッグプレス運動とリフトオフ運動(レッグプレス運動の反転運動)が可能、2)上肢ではチェストプレス運動とローイング運動が可能、3)主動筋と拮抗筋のフル・コンセントリック往復運動が可能、4)1台で上下肢同時トレーニングが可能、などが挙げられる.今回、デイケア施設において、筋力向上トレーニングロボットシステム(以下、ロボット)による介入研究を行ったので報告する.<BR>【方法】対象はF市のデイケア通所高齢者19名であり、無作為にてロボット群10名(平均年齢78.9歳)と対照群(9名(平均年齢80.4歳)とに分けた.被験者の要介護度は、要支援1~2、要介護1~2であった.介入開始前と終了後に、ファンクショナルリーチ(FR)、開眼片脚立ち時間、長座体前屈、5m最大歩行速度、3mTUG(Timed Up-and-Go Test)、上下肢筋力(握力、肘関節屈伸、膝関節屈伸、股関節屈曲、足関節背屈)を測定した.そして、各測定項目について介入前後の値を比較・検討した.なお、統計学的検定には対応のあるt検定を用い、有意水準は危険率5%未満とした.トレーニングは、週2回の頻度で12週間実施した.トレーニングの流れは、体調確認、ウォーミングアップ、トレーニング、クーリングダウン、体調確認であった.対照群のトレーニングはマシンによるレッグプレス、レッグエクステンション、アブダクション、ローイング(いわゆるパワーリハビリテーション)であり、ロボット群のトレーニングは、レッグプレスとリフトオフの往復運動、ローイングとチェストプレスの往復運動であった.<BR>なお、対象者には事前に十分な説明を行い、文書による承諾を得た.<BR>【結果】対照群では、FR、膝関節伸展筋力、股関節屈曲筋力が有意に改善、ロボット群では、5m最大歩行速度、膝関節屈伸筋力、股関節屈曲筋力、肘関節伸展筋力、足関節背屈筋力が有意に改善した.<BR>【考察】今回、膝関節屈曲、股関節屈曲、足関節背屈において有意な改善を認めた要因として、ロボット独自の運動(リフトオフ運動)が寄与したのではないかと考えた.<BR>【まとめ】今回、筋力向上ロボットの優れた特性を活かすことができた.今後は、高齢者の介護予防のみならず、生活習慣病予防対策も視野に入れたロボットの実用研究を進める予定である.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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