除脂肪体重に着目し理学療法介入をおこなった肥満COPD患者の一症例
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概要
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【目的】COPD患者の骨格筋は筋力・筋持久力の低下や筋量の低下などの機能異常を示すといわれている.筋重量を反映するものとして身体組成測定で得られる除脂肪体重(fat-free mass:FFM)がある.FFMは運動耐容能や予後と関連する因子でもあるため重要とされており、呼吸リハビリテーションマニュアルでも栄養評価のなかで可能であれば行う評価として記載されている.今回、肥満COPD患者に身体組成測定を行いFFMの変化に着目しながら理学療法を行ったのでここに報告する.<BR>【症例】今回の報告に対し同意得た57才男性.身長162.8cm.酪農業を営む.10年前から息切れを自覚し、5年前にCOPDと診断され(GOLDの重症度分 最重症)、内服・吸入治療中である.平成17年1月呼吸リハビリテーション目的にて2週間入院し、その後外来にてフォローしている.急性増悪にて入退院を数回繰り返し、平成20年4月からHOT(安静/ 労作:1/2-3L/分)およびNPPV(IPAP/EPAP:10 /4hPa)を導入した.現在HOT2/4L/分で施行している.<BR>【経過】症例に対し平成20年4月より体重、身体組成評価を行った.身体組成測定にはインピーダンス法を用い、計測機器は多周波数方式体脂肪計SEKISUI MLT-300を使用した.また、症例はBMI 22kg/m<SUP>2</SUP>以上の肥満で、減量の必要があり、理学療法はFFMを保ちながら体重を低下させることを意識し、下肢筋力トレーニング、有酸素運動(歩行、エルゴメーター)を中心の運動療法の導入や、仕事場(畑など)への移動を通して歩数を増やす等のアドバイス的介入を行った.身体組成は平成20年4月8日 体重72.5kg、BMI27.4kg/m<SUP>2</SUP>、FFM42.2kg、脂肪重量(fat-mass:FM)30.3kg、体脂肪率(FAT%)41.8%.平成20年7月23日 体重74.0kg、BMI27.0kg/m<SUP>2</SUP>、FFM46.3kg、FM27.7.kg、FAT%37.5%であった.体重・FFMは増加し、FMは低下している.<BR>【考察】FFMは筋重量を反映することから筋重量の増加がみられたといえ、体重増加もFMは減少していることから筋重量の増加によるものと考えられた.本症例は今後標準体重を目指して体重の減少と、さらなるFFM増加を目標とした運動療法プログラムを考えていく必要があると思われる.<BR>【まとめ】FFMは運動療法の効果を規定する因子でもあるとされており、COPD患者の理学療法において、必要な指標のひとつであるといえる.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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