6分間歩行試験中の呼吸循環応答と主観的呼吸困難感の推移
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概要
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【目的】6分間歩行試験(6MWT)は、運動耐容能を評価するフィールドテストとして臨床現場において汎用されている.また、近年の呼吸器疾患患者に対する6MWTの研究では、歩行距離に加えて血中低酸素状態(desaturation)を評価することで、疾患特異的な予後予測の意義について検討されている.呼吸不全患者に対する6MWTにおけるアメリカ胸部学会(ATS)のガイドラインでは、開始時と終了時の評価が推奨されているが、患者の重症度や状態の変化を把握する場合、終了時のデータより実施中の反応を評価する方が感度が良いのではないか.また、6MWTにおけるdesaturationの測定において、6分以内に最も反応が出る時間があれば、そのデータを採用する方がテスト実施中の患者の負担が少なくて済むのではないかと考えられる.このような考えをもとに、我々は、SAS用の連続測定機能を持った腕時計式パルスオキシメーター(WristOxTM6MW、NONIN社)のメモリー機能を活用し、6MWT専用の解析ソフト(WristOxTM6MW解析ソフト、STARPRODUCT社)を開発した.これにより、6MWT中の患者の呼吸循環動態の把握が容易になった.今回、我々は、慢性呼吸不全患者の6MWT中の各指標の推移に着目し、6MWT専用解析ソフトを活用して、6MWT中の呼吸循環応答および主観的呼吸困難感の推移を調べ、その特徴について検討した.<BR>【方法】平成20年6月以降、当院にて6MWTを実施した者の中から当該研究の対象になることについて同意を得た、65歳以上の慢性呼吸不全患者を対象とした.疾患別内訳は、COPD、間質性肺炎、肺結核後遺症である.対象者のうち、6MWT中に休憩あるいは途中で中止したものは除外した.対象者には、研究の目的およびデータの取扱いについて説明をし、承諾を得た.ベースライン測定として歩行距離、肺機能検査、息切れ分類、重症度を測定した.6MWTは、ATSのガイドラインに準じて実施した.6MWT開始前後3分間を加え、テスト実施中1分ごとに、パルスオキシメーターを使用し、SpO2、脈拍を自動計測した.また、主観的息切れの指標としてBorg指数を測定した.6MWT中のSpO2、脈拍およびBorg指数の推移について、疾患別および重症度別に比較した.合わせて、6MWT測定中にSpO2が最低値をとる時間を比較し、desaturationを把握する時間を推定した.<BR>【結果および考察】脈拍およびBorg指数は経時的に終了時点まで増加したが、SpO2は6分以内に最低値を示した.各疾患におけるSpO2および脈拍の推移は重症度に対応して類似しており、各指標単独の比較では鑑別できる違いはみられなかった.SpO2、脈拍およびBorg指数を合わせた比較では、各々の重症度に対応した疾患特有のパターンを示す傾向がみられた.6MWT実施前後のデータだけでなく、実施中の反応を測定することの重要性が示唆された.さらに症例数を増やして傾向を検討し報告したい.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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