糖尿病患者における運動継続と自己効力感の関連性について
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概要
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【はじめに】当院では糖尿病教育入院患者の運動指導は、心肺運動負荷試験(CPX)実施後、理学療法士(PT)が個別に指導しており、退院6ヶ月後に再検査(各部門での再指導とCPX)も行っている.また糖尿病治療に対する自信アンケートを入院時、リハビリテーション(リハ)終了時、退院6ヶ月後に実施し自己効力感を調査している.今回、退院6ヶ月後の運動継続の有無別に自己効力感と入院前の運動習慣の関連性について調査し、今後の課題について検討した.<BR>【対象と方法】対象は2006年9月~2008年4月の期間に、当院でPTによる運動指導を受け退院6ヶ月後に再検査が行えた30名(男性18名、女性12名)とした.退院6ヶ月後に、1日1回20分以上、週3日以上の運動を継続している者を運動群とし、運動群と非運動群に分け、自己効力感を2群間で比較検討した.自己効力感は質問紙法により3項目を0~100%で表し、入院時、リハ終了時、退院6ヶ月後に実施した.なお、対象者には事前に十分な説明を行い、同意を得た上で実施した.<BR>【結果】対象者30名のうち運動群21名(70%)、非運動群9名に分けられた.入院前に運動習慣があった者は運動群では47.6%、非運動群では0%であった.運動群と非運動群における入院時と退院6ヵ月後のATレベルでの酸素摂取量に有意差はなかった.自己効力感は運動を週3日以上続ける自信(質問1)に関して、運動群が非運動群に比べて入院時、リハ終了時、退院6ヶ月後において有意に高値を示した(p<0.05).20分以上有酸素運動を行っていく自信(質問2)に関しては、入院時、退院6ヶ月後において運動群が有意に高値を示した(p<0.05)が、リハ終了時には有意差は認められなかった.有酸素運動以外の運動(筋力トレーニングやストレッチなど)を実施する自信(質問3)に関して、入院時では両群ともに低値を示したが、リハ終了時には上昇した.退院6ヶ月後のみ両群間に有意差を認めた(p<0.05).<BR>【考察】今回、教育入院中に指導を受けた内容を70%の人が継続できていた.有酸素運動と筋力トレーニングの併用が有用であると言われているが、入院時に筋力トレーニングやストレッチの知識がない者が多く、入院時の質問3の値が低値であった要因と思われる.質問1は運動継続に対する質問であるが、全ての時期において運動群に有意差を認めており、得点が高い者ほど運動継続ができていた.また非運動群の全ての症例において入院前の運動習慣がなかったため、入院前の運動習慣がなく自己効力感が低い者に対して、外来通院を増やすなど運動継続のための何らかの介入が必要であると考える.さらに非運動群の要因に対する改善策として整形外科疾患が出現した際などに再度PTが個別に指導が行えるような地域連携システム作りが必要と考える.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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