等速性単関節筋力とアジリティーの関係
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概要
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【背景】一般的にアジリティーテストは、競技における身体能力を評価する目的で広く行われている.アジリティーを構成する要素は筋力、柔軟性、協調性などの要素が関係しているといわれている.しかしながら、アジリティー向上のためのトレーニングはラダートレーニングなど実際の動きを反復させることで、協調性の向上に主眼をおいたものがほとんどで、アジリティー能力と筋力トレーニングの側面から検討した報告は少ない.<BR>【目的】今回我々は、アジリティーと等速性股、膝関節屈曲、伸展筋力との関係について検討し、アジリティー能力改善のための筋力トレーニングの立案をすること.<BR>【対象】高校女子バスケットボール選手20名(年齢16.1歳、身長161.7cm、体重55.1kg)とした.<BR>【方法】アジリティーの課題は前後走とシャトルラン、それぞれの後にクロスステップを行い、30秒以内で終了する程度の内容とした.アジリティーは3回施行し、平均の時間をアジリティーの評価とした.等速性単関節筋力の測定は、CYBEX NORM(メディカ社製)を使用し股関節、膝関節とも60d/sの角速度で3回施行し体重当たりのピークトルクで評価した.<BR>【結果】アジリティーの平均は25.4秒であった.等速性単関節筋力は股関節伸展筋力(HE)2.60Nm/kg、屈曲筋力(HF)1.61、膝関節伸展筋力(KE)2.54、屈曲筋力(KF)1.35であった.アジリティーと等速性単関節筋力との相関は、HE:-0.24(p=0.31)、HF:-0.61(p<0.01)、KE:-0.15(p=0.53)、KF:-0.61(p<0.01)であり、HEとKEではアジリティーとの間に相関が認められなかったものの、HFとKFではアジリティーとの間に有意な相関が認められた.<BR>【考察】傷害予防や再発予防を考慮すると、安全で効率の良い動作を獲得させることが必要不可欠である.そのためには、一歩を欲張らず細かいステップを踏み、下肢への回旋ストレスを回避させることが重要となる.つまり、傷害予防や再発予防にはターンやカッティングなどのアジリティー能力の詳細な評価と向上に向けたアプローチが重要である.そのためには、アジリティーと筋力の関係を明らかにし、対象となる筋や運動を明確にすることで、効率的なアジリティー能力の改善が可能になると考える.今回の結果において、アジリティーと筋力の関係から、HEやKEの脚伸展筋力とは相関を認めないものの、HFやKFの脚屈曲筋力と有意な相関を認めた.アジリティーと筋力の関係を示した過去の報告を散見するとDean RSは股関節屈曲筋力の増加により、シャトルランのタイムが向上したと報告している.今回の結果においても、Dean RSと同様にHFとアジリティーには有意な相関を認め、さらに我々の研究においてはKFとの間にも有意な相関を認めた.このことからアジリティーの向上には、脚屈曲筋力であるHFやKFへのアプローチが必要であると考えた.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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