伸展型腰痛症に対するATM2の治療効果:―腰痛症に対するATM2の長期治療効果―
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概要
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【目的】腰痛治療器ATM2(Back Project 社)は、固定ベルトで骨盤や脊椎を理想の肢位に固定し、抵抗運動を用いて痛みのない筋活動パターンに修正することで、"痛みのある運動"を"痛みのない運動"に変え、腰痛軽減効果を得るものである.本研究は、伸展型腰痛症に対するATM2の使用がアライメントと腰痛の軽減に及ぼす効果を明らかにすることを目的とした.<BR>【対象】腰痛症と診断され理学療法を処方された患者で、体幹伸展時に疼痛を訴える13名(男性11名、女性2名、平均年齢27.8±4.2歳)を対象とした.<BR>【方法】(1)Visual Analog Scale(以下VAS)を用いた疼痛、(2)SpinalMouse(index社製)を用いた立位体幹伸展時の運動性を評価した後、ATM2を用いた治療を1ヶ月間継続し(ATM2期)再評価を行った.4週間の経過観察後、同様な評価を実施し、1ヶ月間のストレッチエクササイズ後(ストレッチ期)、再評価を行った.ATM2による治療は、固定ベルトで痛みのない立位姿勢を獲得し、運動中に痛みが出現しないことを確認した後、体幹の伸展運動を10回反復した.ストレッチは、胸椎伸展(CATエクササイズ)と股関節伸展(腸腰筋のIDアクティブストレッチング)を20秒間×10セット行った.SpinalMouseによる分析は、股関節伸展(Sac/Hip)、胸椎伸展(ThSp)、腰椎伸展(LSp)の運動性を数値化した.ATM2期およびストレッチ期の治療効果は、各期の初期評価と再評価を統計学的に分析した.また、ATM2の治療効果持続性については、ATM2使用前後の評価と4週間の経過観察後のストレッチ期初期評価を比較した.検定には、T検定と wilcoxon の順位和検定を使用した.<BR>【結果および考察】(1)ATM2期に関して、Sac/Hip、ThSp、LSpの運動性に有意差はなかったが、VASは3.9±1.2から1.6±0.7に有意に減少した(P<0.01).(2)ストレッチ期に関して、Sac/Hip、ThSp、LSpの運動性およびVASに有意差はなかった.(3)ATM2期の再評価とストレッチ期の初期評価におけるVASは、各々1.6±0.7と3.3±0.6でATM2期の再評価が有意に低値であったのに対し(P<0.01)、ATM2期の初期評価とストレッチ期の初期評価については有意差がなかった.これらより、ATM2による1ヶ月間の治療によって痛みは軽減するが、治療終了後4週間経過すると効果が減少し、ATM2使用前の状態に戻ることが示唆された.一方、体幹伸展運動性の変化については有意差がなく、胸椎、腰椎、股関節の運動パターンの変化を明らかにすることができなかった.しかし、臨床的には疼痛軽減に伴い運動性が向上する例は多く、今後、さらに症例数を増やし検討を重ねていきたい.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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