頚椎症性脊髄症における足10秒テストの基準値
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概要
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【目的】頚椎症性脊髄症(CSM)における運動機能評価として行われている手10秒テスト(H10T)は頚髄症治療成績判定基準(JOA)と相関しており効果判定に有用であるとされ、足10秒テスト(F10T)も同様に臨床上有用な評価であるとされている.しかしH10Tにおいては20回未満でCSMの存在を疑うという基準があり広く普及しているがF10Tは広く普及しておらず明確な基準が示されていない.そこで今回我々はF10Tにおける基準を示すことを目的にF10TとH10T、歩行、JOAについて相関を調査し回帰式から基準値を算出し若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象】2005年6月〜2008年5月にCSMにて手術のため入院し術前に運動機能評価を実施した206例412肢中、上下肢ともに病的反射陽性であった側の228肢(男性144肢、女性84肢)、平均年齢63.9(31-89)歳)を対象とした.なお個人情報保護の観点から本研究におけるデータ使用に関し同意を得られたものについて調査した.<BR>【方法】評価項目はF10T、H10T、歩行、JOAとした.F10Tでは榎らの方法に準じ端座位で踵接地したまま10秒間に足関節底背屈可能であった回数を測定し、歩行は予備歩行路を設け10m最大努力歩行時間を測定し歩行不能例を評価に加えるため中村らに準じて逆数を求めた.またJOAでは上肢項目を除いた11点満点とした.F10TとH10T、歩行、JOAについて相関を求め、統計処理にはSpearmanの順位相関を用い、さらに予測値を求めるため回帰分析を行いF10Tの基準を予測した.有意水準は危険率5%未満とした.<BR>【結果】F10TとH10Tは有意に相関し(ρ=0.56)、回帰式はy=12.379+0.745xとなりH10Tで20回を基準とするとF10Tは27.2回となった.F10TとJOAは有意に相関し(ρ=0.45)、回帰式はy=14.243+1.682xとなりJOAで日常生活に大きな支障をきたさないと考えられる軽度障害レベルである8を基準とするとF10Tは27.7回となった.F10Tと歩行は有意に相関し(ρ=0.50)、回帰式はy=22.73+32.042xとなり歩行はADL自立レベルである10秒を基準とするとF10Tは25.9回となった.<BR>【考察】従来の報告通りF10TとH10TまたはJOAにおいて有意な相関を示した.CSMは脊髄の障害域により分類され上肢症状が強く現れるものもそうでないものもあるためH10Tは下肢の障害程度にあてはまらないことがあり、歩行は重症であるほど転倒の危険を伴うことや検査不能となる場合があり、JOAは問診であるため実際の状況をみたものではないといった問題点が考えられる.以上よりF10Tは25〜28回程度が基準値となり、また下肢症状が反映され、安全で簡便な検査法であると考えられた.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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