前方ステップ動作にみられるheel接地の検討:―サッカーキック動作の軸足を考えて―
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概要
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【はじめに】成長期の膝伸展機構障害としてOsgood-Schlatter病がある.当院の調査によるとバスケットボール・バレーボール競技では成長期後の成人であっても膝伸展機構障害のジャンパー膝が引き続き発生するが、成人サッカー選手は膝伸展機構障害よりも、半月板損傷などの回旋ストレスによる軸足の障害が多くみられた.バスケットボール・バレーボールではジャンプ後の着地はtoe接地である.サッカーのキック動作では軸足接地がheelからである.動作の違い、競技の違いがあるのはもちろんだがサッカーでは他競技との接地の違いが上記の障害発生に影響を及ぼしているのではないかと考えた.今回toe接地とheel接地の筋活動を確認し、膝関節における足関節、股関節の安定化作用の違いを考察した.<BR>【対象】研究の主旨を説明し、同意を得た下肢に疾患のない健常成人9人<BR>【方法】非利き足を身長の1/2の距離に前方ステップし、toe接地からの着地とheel接地からの着地をそれぞれ測定した.今回測定肢は全員左足であった.筋電図計はNORAXON社製テレマイオ2400Tを用い、大殿筋・ハムストリングス・大腿直筋・内側広筋・腓腹筋内側・前脛骨筋を計測した.測定区間は、ジャンプした肢が床に接地した直後より1秒間の平均とし、各個人ごとにtoe接地とheel接地を比較した.<BR>【結果】各個人で比較したところ、toe接地は大殿筋、腓腹筋の筋活動量が大きい傾向で、heel接地はハムストリングス、大腿直筋、内側広筋の筋活動量が大きい傾向であった.前脛骨筋の傾向は見られなかったが、heel接地では接地直前より筋活動がみられた.<BR>【考察】膝関節の回旋安定性の一つとして、大腿外旋、下腿内旋の膝関節内旋位で中心靭帯系安定化機構がある.toe接地で制動を行う競技では足関節底屈位、股関節屈曲位での着地であり、足関節では底屈・下腿内旋モーメントが生じ、股関節では伸展外旋モーメントが発揮されやすい.そのため膝関節における回旋不安定性に対応しやすいと思われる.一方、heel接地では足・股関節において上記の制御が行いにくく膝関節に回旋ストレスが生じやすいと思われる.健常人ではそのような力学的ストレスを軽減させるためにハムストリングスや前脛骨筋などを有効に発揮させ対応していると考える.今後は障害群での傾向を確認し、接地直後にかかる負荷をいかに上肢や体幹で補っているかを確認し障害発生メカニズムを明らかにしていくことが課題である.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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