TKA施行後の矢状面Laxityにおける拘束性と軟組部織の影響:―覚醒時と麻酔下の比較より―
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概要
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【目的】当院では後十字靭帯温存型での人工膝関節全置換術(以下;TKA)後の矢状面Laxityについて覚醒時、麻酔下で比較検討を行い報告した(2006日本理学療法学術大会).今回、後十字靭帯切離型での矢状面Laxityを軟部組織の緊張の差異および拘束性の差異で比較し、TKA術後のLaxityに対するリハビリテーションアプローチについての留意点を考察することを目的とした.<BR>【対象】2000年9月から2007年5月の80ヶ月間に外傷歴のない変形性膝関節症により当院にてTKAを施行した症例20例20膝関節(男性3名、女性17名、平均年齢72.7歳)を対象とした.手術は全例PCL切離型で同一術者によって施行され、機種はLCS Total Knee System(Depuy)を使用した.<BR>【方法】本研究に説明と同意を得た症例に対し、矢状面Laxityへの軟部組織と拘束性の影響を考慮するために覚醒時及び麻酔下(反対側手術時:平均術後期間19ヶ月)それぞれの膝関節屈曲30度(高拘束性)、75度(低拘束性)で測定を行った.測定にはKT2000 Knee Arthrometer(MEDmetric)を使用し、膝前後方向総変移量(total A-P displacement;TD)を計測した.TDについては133Nの前方引き出し力及び89Nの後方引き出し力を加え、各3回計測後(検者内誤差:0.5mm未満)、平均値を算出した.統計学的処理は覚醒時、麻酔下での30度TD、75度TDを二元配置分散分析にて比較検討した(有意水準5%).<BR>【結果】覚醒時と麻酔下の平均は30度TDで5.1±2.1mmと6.7±2.9 mm、75度TDでは7.0±2.0mmと7.7±3.4mmであった.覚醒時、麻酔下での比較では有意に麻酔下で大きく(p=0.026)、30度TD、75度TD間では低拘束性で有意にLaxityは大きかった(p=0.001).一方、2要素間(軟部組織、拘束性)に有意な交互性は認められなかった(p=0.193).<BR>【考察】本研究よりLCS PCL切離型TKAのLaxityについては軟部組織の緊張の有無、人工関節の拘束性(切離型では回旋方向のみに拘束性がない)の高低が独自に影響していることが明らかとなった.拘束性、軟部組織の緊張はそれぞれ独自に弛緩性(Laxity)と関連があることから、術後リハビリテーションの場合は画一的なLaxityを求めるのではなく、関節デザインや軟部組織の緊張を考慮して行うべきである.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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