サッカー選手におけるインサイドキックの簡易的な動作分析の試み:―動作特性と鼠径周辺部痛の関連性―
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概要
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【目的】サッカー選手のキック動作分析の報告は取り扱いに複雑な動作解析機器を利用したものが多く、簡易的にキック動作と障害を関連付けるものは少ない.臨床において鼠径周辺部痛(GP)は股関節屈曲・内転・内旋の複合運動で再現性があることが多い.今回インサイドキックの動作特性とGPとの関連性について検討する. <BR><BR>【対象】対象は高校生6名、社会人2名計8名のサッカー選手で全員小学生からサッカーを行っていた.キックやダッシュでGPのある5名をP群、GPのない3名をNP群とした. <BR><BR>【方法】1)GP機能評価項目:A,股関節ROM・筋緊張検査、B,抵抗テスト(股関節内転・SLR・上体起こしでのGPの有無)、C,下肢MMT、D,片脚立位上体前屈(PSS)、E,疼痛再現性テスト(股関節屈曲・内転・内旋).2)インサイドキックフォーム分析:A,キック脚のバックスイング(BS)、B,ボールインパクト(BI)時の足部とボールの位置、C,キック脚のフォロースルー(FS)、D,B~Cのキック脚対角肩甲帯(肩甲帯)、体幹の動きをビデオカメラで撮影した.インサイドキックは実際に練習や試合で使う強度・距離のキックを行った.(本研究は当院の倫理審査委員会の承認を得て行った.) <BR><BR>【結果】1)AではP群、NP群に著名な制限はなかったが、P群の鼠径周辺部の筋緊張の亢進がみられた.BではP群に股関節内転で長内転筋近位部、SLRで大腿直筋近位部に疼痛がみられた.C・Dでは問題なくEではP群にGP、違和感がみられた.2)P群の動作特性としてAでは股関節伸展が大きく、股関節外転・下腿外旋を認めない.Bでは前・後足部.Cでは股関節屈曲・内転・内旋をとる.Dでは肩甲帯屈曲不足、体幹後傾していた.NP群はAでは股関節伸展が小さく、股関節は外転・下腿外旋をとる.Bでは後足部.Cでは股関節屈曲・外旋で、Dでは肩甲帯、体幹屈曲などが観察された.<BR><BR>【考察】P群のGPは、BSで大腿直筋の伸張ストレス、BIが前足部による鼠径周辺部の伸張ストレス.FSが股関節屈曲・内転・内旋による鼠径周辺部の圧縮ストレス、体幹後傾での筋活動増大等でGPが発生すると考えた.NP群のBSは股関節外転・外旋、BIは後足部で鼠径周辺部への伸張ストレス、FSの股関節屈曲・外旋で鼠径周辺部の圧縮ストレス等は回避されGPが発生しないと考えた. <BR> <BR>【まとめ】簡易的なインサイドキック動作分析でも動作特性とGPの関係を評価する一助になることが示唆された.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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