バランスディスクとバランスパッドを使用したエクササイズが重心動揺に与える影響
スポンサーリンク
概要
- 論文の詳細を見る
【目的】バランスエクササイズ(以下、エクササイズ)は転倒の予防に有効であり(Huら、1994)、近年さまざまなツールを用いたエクササイズが実施されている.しかし、どのツールを使用することが効果的なエクササイズとなり、転倒の予防に役立つかは明確ではない.Kirhenら(1984)は、転倒者では重心の揺れが大きく、重心動揺を減少させることが転倒予防につながる可能性があるとしている.本研究では、どのようなツールを使用してエクササイズを行えば重心動揺の減少に効果が高いのかを明らかにすることを目的とした.【方法】対象は、整形外科疾患を有する70歳以上の高齢者(平均年齢82.5±6.4歳) で、研究の趣旨を十分に説明し同意を得た30名とした.対象を、バランスディスク(DISCOSIT、 Gymnic:以下、ディスク)を使用してエクササイズを行う群(D群:10名)、バランスパッド(AIERX、 (株)酒井医療:以下、パッド)を使用してエクササイズを行う群(P群:10名)、エクササイズを行わない群(C群:10名)の3群に無作為に分類した.ディスクは形状が楕円形であり対象の重心移動にともない、床とディスクとの接地面が変化するものであった.一方、パッドは形状が直方体であり床とパッドとの接地面が変化しないものであった.エクササイズは5種類で7分以内に終了し、PTの監視下で週に2回、4週間行った.介入の効果判定は重心動揺を重心バランスシステム(JK-101、(株)ユニメック)を用い、30秒間の閉眼の安静立位で測定した.重心動揺の検査項目は単位軌跡長、矩形面積、外周面積、実効値面積で、介入開始前と開始4週間後に測定した.3群のそれぞれの介入前後の比較を対応のあるt検定を用いて行った.また、各群の改善率を算出し、一元配置分散分析を用いて比較した.本研究は、当院倫理委員会の承認を得て行った.【結果】介入前後の重心動揺の比較では、D群の単位軌跡長、矩形面積、外周面積が有意に減少したが(p<0.05)、実効値面積は変化しなかった.P群では単位軌跡長が有意に減少したが(p<0.05)、矩形面積、外周面積、実効値面積は変化しなかった.C群ではどの項目も変化しなかった.改善率の比較では単位軌跡長は、C群に比べD群とP群で有意に大きかったが(p<0.01)、D群とP群では有意な差はなかった.また、矩形面積、外周面積、実効値面積では3群間の改善率に有意な差はなかった.【考察】介入前後でD群とP群に単位軌跡長の減少を認めたが、改善率の比較ではD群とP群の間に差を認めず、ツールの違いによる重心動揺の減少を明確にできなかった.単位軌跡長は重心の安定性に関与しており、重心の安定性の向上にはツールの形状に関係なく、不安定なツールの上でエクササイズを実施することが効果的だと思われる.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
- 療養型病院における廃用症候群の予後予測
- 髄腔内バクロフェン治療(ITB)後の理学療法:―歩行可能な症例に対する評価とアプローチ―
- 理学療法士の職域拡大としてのマネジメントについて:―美容・健康業界参入への可能性―
- 脳血管障害患者の歩行速度と麻痺側立脚後期の関連性:短下肢装具足継手の有無に着目して
- 健常者と脳血管障害片麻痺者の共同運動の特徴:―異なる姿勢におけるprimary torqueとsecondary torqueの検討―