軟骨下骨の骨充填率は膝関節成熟指標のひとつである
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概要
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【目的】我々は家兎の関節軟骨を調べ2006年のOsteoarthritis & Cartilageに報告した.また2008年の本学術集会において、家兎膝関節軟骨では軟骨細胞密度に加齢変化と部位差があることを発表した.今回は軟骨下骨の骨充填率(以下VF)について測定し、これらに加齢変化と部位差があるか調べた.また石灰化軟骨層の厚さと細胞密度を調べた.<BR><BR>【方法】所属大学動物実験委員会の承認を得て、3週、8週、24週、48週および120週齢の5群からなる日本白色家兎20羽(各群4羽)で研究した.安楽死後に左右の膝関節を摘出し、脛骨高原の内側中央部(MT)、同外側中央部(LT)、大腿骨内顆(MC)、同外顆(LC)の4部位から標本を採取した.標本を固定後EDTA脱灰しパラフィン包埋した.包埋標本から6μm厚の横断切片を作りサフラニンO染色を行い検鏡した.4部位の石灰化軟骨層の厚さおよび細胞数を調べ、細胞数を厚さで除して細胞密度とした.軟骨下骨のVFは、Weiらの方法に準じて関節軟骨直下の軟骨下骨と考えられる領域部に0.25mm×1.0mm区画の枠を定め、その2次元面積内において骨が占める割合と定義した.VFの測定にはNIHのimage-Jを用いた.各データについては左右の測定値を平均し、krusukal-wallis検定で有意性を検討しtukey-kuramer法で5群に差があるか多重比較した.<BR><BR>【結果】軟骨下骨のVFはMTでは3、8、24、48および120週齢においてそれぞれ、54.7%、80.0%、97.5%、97.4%ならびに99.2%であった.LTではそれぞれ49.0%、72.7%、99.1%、97.0%および98.0%であった.MCでは48.1%、67.5%、95.3%、96.0%および95.7%であった.LCでは52.9%、57.7%、94.9%、96.8%および95.8%であった.これらの軟骨下骨のVFは4部位ともに8週から24週にかけて増加し、24週以降は定常化した.軟骨下骨下に骨梁構造が形成されて軟骨下骨の境界を明確に区別できるようになるのはVFが90%を超える頃でありこれは24週であった.石灰化軟骨層は8週では一部において、24週からはすべての標本で観察された.石灰化軟骨層の厚さ、および石灰化軟骨細胞密度は4部位において加齢変化と部位差が見られなかった.<BR><BR>【考察】石灰化軟骨層の出現時期と軟骨下骨のVFの定常化時期とはほとんど一致していることから家兎では24週齢に境界があると思われる.24週齢より前の3週齢と8週齢は成熟過程にある動物で、24週齢以後は骨格的に成獣である.家兎は関節軟骨の研究によく使用されるが、本研究結果は、関節軟骨および軟骨下骨の発達途上の変化を調べるならば3〜24週齢で比較し、骨格的成獣となった以後の加齢変化を調べるならば24〜120週齢の動物で比較するのがよいことを示している.本研究結果を基にヒト関節軟骨の加齢変化と軟骨変性を調べることが重要であり、今後さらなる研究が必要である.<BR><BR>【まとめ】軟骨下骨の骨充填率は膝関節成熟指標のひとつである.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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