Timed Up & Go testと起居・移動動作パフォーマンス、および活動との関連について
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概要
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【目的】<BR> Timed Up & Go test(TUG)は体力を示す指標であり、高齢者の転倒リスクや脳卒中患者の機能評価として用いられている.TUGの課題は椅子からの立ち上がり動作、歩行、方向転換、着座といった各要素動作から成り立っている.今回我々は、回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者を対象とし、各要素動作に類似する10m間最大歩行所要時間(10mWT)、背臥位から立位までの所用時間(ST)、それに粗大運動技能を反映した下肢・体幹の運動年齢(MOA)、日常生活活動指標としてバーセル・インデックス(BI)との関連について検討する目的で研究を実施した.<BR><BR>【対象と方法】<BR> 対象は、当院の回復期リハビリテーション病棟に入院した脳卒中患者69名である.平均年齢は66.7±11.0歳、性別は男性43名・女性26名、診断名はくも膜下出血1名、脳出血20名、脳梗塞48名で、左片麻痺29名、右片麻痺32名、両片麻痺1名、明らかな麻痺なし7名、発症から退院までの期間は22.4±7.1週である.測定項目はTUG、ST、10mWT、MOA、BIとした.対象者には検査の内容を説明し同意を得てから実施した.TUGと各項目との関係について、統計学的処理を行い、相関係数を求めた.なお、有意水準は5%とした.<BR><BR>【結果と考察】<BR> TUGは10.9±5.7秒、10mWTは8.4±5.0秒、ST は6.1±3.1秒、MOAは46.1±16.8ポイント、BIは93.1±10.1点であった.TUGと各項目の相関係数は、10mWT;r=0.89(p<0.01)、ST;r=0.73(p<0.01)、MOA;r=-0.74(p<0.01)、BI;r=-0.73(p<0.01)であった.結果からTUGの要素動作に類似性の高いST、10mWTとTUGの間には、予測通り有意な相関が認められた.またMOA、BIとの間にも有意な相関が認められ、粗大運動技能や日常生活の活動性をも想定しうる指標であると思われる.<BR> TUGでは13.5秒以内が高齢者に対する転倒予測のカット・オフ値として報告されている.この値を参考にして各測定項目と比べてみると、10mWTでは15秒以内、STでは10秒以内のものが多く、実用的なレベルにあった.MOAでは36ポイント以上では、カット・オフ値以内となる.BIについてTUGの測定が可能であったものは60以上であったことから、TUGが測定可能となれば運動機能的にはBI60以上獲得可能ではないかと示唆された.今回の結果から、TUGは回復期の脳卒中患者においても各要素を代表とする起居・移動動作パフォーマンス、粗大運動技能を反映するMOA、また日常生活活動の指標であるBIとも関連が強かった.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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