維持期脳血管疾患患者における、運動療法の効果について:―心肺運動負荷試験からの考察―
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概要
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【背景】脳卒中片麻痺患者は、同年代の正常人と比較して著明な全身持久力の低下があることが指摘されている.しかし、その具体的な数値や長期間の全身持久力訓練効果に関する報告はあまり多くない.そこで、当院での維持期脳血管疾患患者における心肺運動負荷試験(以下、CPX)データを報告すると共に、運動耐容能に及ぼす運動療法の効果を検討した.<BR><BR>【対象】平成19年4月から平成20年9月までの間、当センターで週1~2回の頻度にて運動療法を実施した維持期脳血管疾患患者31名(平均年齢68.6歳、男性20名、女性11名)であった.全例で実用的屋内歩行能力を有し、23名に虚血性心疾患やASOの既往があった.尚、各被験者には研究内容を説明し同意を得た.<BR><BR>【方法】運動療法開始に際し、自転車エルゴメーターを用いて10W/分のramp負荷法にて、症候限界性運動負荷試験を行った.同時に、ミナト社製エアロモニタAE-300Sを用いて呼気ガス分析を行い、AT watt・AT V(dot)O<SUB>2</SUB>・peak watt・peak V(dot)O<SUB>2</SUB>を求めた.1年後にも同様の検査を実施した.運動療法の内容は、AT処方による自転車エルゴメーター20分・2~3種類の下肢及び上肢レジスタンス運動・ストレッチ体操であった.統計処理にはSPSS 11.5J for Windowsを使用し、T検定を有意水準5%にて実施した.<BR><BR>【結果】呼気ガス分析データの各項目について、1回目/2回目の平均値は次の通りであった.AT watt 49.6/47.6、AT V(dot)O<SUB>2</SUB> 13.1/12.3ml/kg/min、peak watt 85.7/84.5、peak V(dot)O<SUB>2</SUB> 18.8/19.0ml/kg/min.これらのデータにおいて、有意な改善はみられなかった.しかし、全ての項目において維持することは可能であった.運動療法中、全ての対象者において入院を要するような疾患の出現はなかった.<BR><BR>【考察】対象が高齢者であったことを考慮すれば、運動療法が運動耐容能の維持に寄与したと考えられる.また、運動療法の効果判定及び安全性の確保という面で、実用的屋内歩行を獲得しているレベルの維持期脳血管疾患患者にも、CPXの実施は有用な評価方法となることが示唆された.<BR><BR>【まとめ】実用的屋内歩行を獲得した、維持期脳血管疾患患者において、AT処方を用いた週1~2回の運動療法を継続することは、運動耐容能維持の観点で有用である.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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