思春期特発性側弯症患者の体力に関する検討(第一報):―敏捷性・瞬発力は、体幹筋力・Cobb角の影響を受けるか?―
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概要
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【目的】思春期特発性側弯症(adolescent idiopathic scoliosis,以下:AIS)患者に関する研究としては、体幹筋力に関するのもが多く、凹側・凸側との関係、カーブの大きさとの関係、左右不均衡との関係が検討されてきた.しかし、体幹筋力やCobb角がAIS患者の体力に及ぼす影響について述べた報告は極めて少ない.本研究の目的は、AIS患者における体力の指標としての敏捷性・瞬発力を評価し、それらが体幹筋力やCobb角によって受ける影響を検討することである.<BR>【対象と方法】当院整形外科を受診後、AISと診断され、リハビリテーション科で運動療法を施行した女児20例(平均年齢14.0歳、平均体重44.2kg)を対象とした.受診時のCobb角は14~80度(平均37.4度)、King分類はTypeI:4例、II:5例、III:5例、IV3:例、V:3例であった.運動能力の評価には、1)体幹筋力、2)瞬発力、3)敏捷性の3項目を測定した.体幹筋力に関しては、Handheld dynamometer(JTECH社製、COMMANDER Power TrackII)を用い、椅座位にて体幹屈曲・伸展・左右側屈を行わせ、それぞれの最大等尺性体幹筋力を測定した.敏捷性、瞬発力に関しては、1999年に発表された、文部科学省新体力テストに準じて、それぞれ、敏捷性の指標とされる反復横跳びと、瞬発力の指標とされる立ち幅跳びを施行させた.測定後、それぞれの測定値を文部科学省調査による、健常女児年齢別体力テストの全国平均値と、各被験者のそれぞれの測定値を比較した.そして、全国平均値以上の群10名を成績上位群、全国平均値以下の群10名を成績下位群とし、成績上位群と下位群の、体幹筋力とCobb角との関連を比較・検討した.尚、統計学的手法として、対応のないt検定を用い、有意水準5%未満を有意差ありと判定した.<BR>【結果】成績上位群と下位群でのCobb角・体幹筋力を比較検討した結果、全てにおいて有意な差は認めなかった.つまり、対象例の敏捷性・瞬発力では体幹筋力やCobb角の大きさによって、影響を受けないという結果であった.<BR>【考察・結語】今回の結果からは、AIS患者の体力の指標としての敏捷性・瞬発力は、体幹筋力やCobb角の影響を受けないことが明らかとなった.今回用いた反復横跳び、立ち幅跳びは、体幹筋力のみならず、下肢筋力やバランス能力も関与している可能性が考えられた.今後、AIS患者の敏捷性・瞬発力を低下させている原因を明らかにし、これらの向上を介して体力の向上を図るための運動療法を行う必要があると考えられた.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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