二分脊椎児の変形・拘縮に対する装具療法についての一考察
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概要
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【はじめに】二分脊椎児のリハビリテーションは、目標とする移動能力を最大限引き出し維持させることが重要であり、変形・拘縮など二次的な障害を最小にすることが望まれる.今回、当院に通院している二分脊椎児の変形・拘縮に対する装具療法について、能力別に検討し若干の知見を得たので報告する.<BR>【対象と方法】当院リハ部に外来通院している二分脊椎児21例に対し、残存筋力から麻痺レベル及び移動能力を分類し、変形・拘縮とそれに対する装具について調査・検討した.<BR>【結果】年齢は学齢前の幼児7例・学齢期13例・社会人1例で、男7例女14例である.下肢筋力による麻痺レベルと移動能力評価は、SharrardとHofferの分類を用いて対比したところ、大きな相違はみられず、歩行の可否から以下の3群に大別した.まず、下肢筋は全て麻痺か腸腰筋が効き、移動は車椅子・バギーが主体のTh~L2レベル、大腿四頭筋までが効き、長距離は車椅子で短距離は杖歩行併用群のL3レベル、前脛骨筋・ハムストリングス・下腿三頭筋・大殿筋等が順次発揮可能になってくる独歩可能なL4~S2レベルであった.L3レベルを境にして、高位例10例、L3レベル3例、低位例8例となった.高位例には脊椎から下肢全般に、低位例では足部限局に変形・拘縮を認め、L3レベル1例に股屈曲・腰椎前弯拘縮を認めた.高位例では、早期から骨盤帯付長下肢装具にて立位・歩行訓練が実施され、拘縮予防目的の夜間装具も6例処方した.L3の3例は、短下肢装具で杖歩行可能であったが、歩行の安定性や歩容に相違がみられ、関節の保護や歩容の低下を防ぐ目的で2例に長下肢装具を処方した.低位例では、L4~S1レベル5例の中で、湯の児式短下肢装具が3例に処方され、S2レベル3例は足底板か装具なしでの独歩が可能であった.<BR>【考察】高位例では、変形・拘縮が多岐に渡り認められているが、全て骨盤帯付長下肢装具が装着可能である.このことは、夜間装具を装着していること・リハビリテーションを継続していること等により、変形・拘縮の進行をある程度緩徐に抑えられているのではないかと推察された.また、L3レベルでは大腿四頭筋が効いているもののハムストリングスや大殿筋等の筋力が弱く歩行時の安定性が期待されない.年齢が進むことによる体重増加などから関節の二次的な障害も考えられ、短下肢装具での歩行が可能でも、歩容の向上や予防的な意味での長下肢装具の適応があり得ると考えた.L4~S1レベルでは、先に前脛骨筋が効いてくることにより、外反扁平や踵足変形を呈した足部となり、靴べら式のプラスチック短下肢装具に比べ脛骨前面の支持が得られ踵足を抑えやすい湯の児式短下肢装具がより適応と考え処方した.以後、足部の安定性と歩容の向上がみられた.今後もリハ継続により二次的なリスクを減らし経過を追っていきたいと考える.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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