Gait Solutionの効果に関する調査
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概要
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【はじめに】<BR> 当院ではCVA患者の治療用装具としては、迅速かつ柔軟な対応が可能という利点から金属支柱付短下肢装具(金属AFO)を幅広く活用している.しかし、CVA患者の中には金属AFOの重さや底屈制限の側面からオーバーブレースとなることもあり、このような場合、Gait Solution(GS)の有効性が言われている.今回、金属AFOでは底屈制限の影響から踵ロッカー時に急速な足底屈を生じ、身体の前方回転が不十分となり円滑な重心移動が困難であるCVA患者に対するGSの効果について調査したので報告する.<BR>【対象】<BR> 対象は当院に入院しているCVA患者の内、金属AFOでは急速な足底屈を認める12名である.性別は男性8名・女性4名、疾患別は脳梗塞8名・脳出血4名、麻痺側別では右5名・左7名、平均年齢65.8±7.9歳、下肢Br.StageはIII2名、IV3名、V7名、足部Modified Ashworth Scale(MAS)は1が3名、2が7名、3が2名であった.<BR>【方法】<BR> 対象者12名に対し、当院訓練室にて金属AFO装着下とGS装着下での50m歩行における歩容を事前に作成した「歩容チェックシート」を用いて、経験年数5年以上のPT2名と観察し、金属AFOとGSの歩容の変化からGSの効果について検討した.尚、用いたGSは靴型金属AFOの外側にGS継手、内側にシングルクレンザック継手を取り付けたものである.また、各対象者の歩行に合わせ抗力と底屈制限角度を調節し用いた.<BR>【結果】<BR> 12名中10名は、GSにて踵ロッカー時の足底屈が緩やかとなったが、2名は足底屈は著変なく急速なままであった.この改善が見られた10名の内、2名は膝過屈曲の改善、他の2名では反張膝の改善も認められた.尚、金属AFOで見られた体幹前傾8名、骨盤後方回旋3名、股関節外旋9名はGSでも著変なかった.一方、改善が見られなかった2名は下肢Br.StageIIIが2名、MASは2が1名、3が1名であった.<BR>【考察】<BR> 今回、12名中10名はGSにて踵ロッカー時の急速な足底屈が改善した.加えて少数ではあるものの、膝関節のコントロールへの有用性も窺えた.これは足背屈筋の遠心性収縮をGSが補助していること、また用いたGSは底屈制限角度の微調整が可能で、症例の下肢機能に合わせ調節したことが身体の前方回転をより効果的に発揮出来た為と考える.変化のなかった2名は他の症例に比べ下肢随意性が低く足部筋緊張が強い傾向にあり、このことが影響していると考える.よって、下肢Br.StageがIV以上で足部に随意的な底屈が僅かでも認める症例に対しては、GS活用の有用性が示唆された.一方、体幹、骨盤帯機能には金属AFO、GS共に差はないことから、より実用的な歩行獲得に向けては、体幹、骨盤帯の促通を併用することが必要であると考えられた.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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