等速性膝伸展筋力・脚伸展筋力がhop testに及ぼす影響
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概要
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【目的】近年、膝関節前十字靭帯(以下ACL)再建術後患者の筋力評価として、closed kinetic chain(以下CKC)での脚伸展筋力評価が注目されており、また、競技復帰時の評価としてパフォーマンステストの重要性が報告されている.しかし、等速性脚伸展筋力とパフォーマンステストとの関係を示した報告は少ない.本研究の目的は等速性膝伸展筋力・脚伸展筋力と、3種の異なるhop testとの関係を明らかにすることである.<BR><BR>【方法】対象は検査の趣旨を説明し同意を得た下肢に疾患のない健常成人女性12名 の利き脚12脚(年齢28.1±2.9歳、身長158.5±6.5cm、体重50.58±4.8kg).等速性膝伸展筋力と脚伸展筋力の測定にはBIODEX SYSTEM3を使用.角速度を60、180、300deg/secとし、各角速度につき5回反復運動を行なった.測定で得たピークトルク(以下PT)を体重で除し、体重比を算出した.hop testは、vertical jump(以下VJ)、single hop for distance(以下SHD)、6m timed hop(以下TH)の3種目を各3回測定した.統計学的分析は各角速度のPT体重比と各hop testの平均値を採用し、その関係をpearsonの相関係数を用いて算出した.有意水準は5%未満とした.<BR><BR>【結果】各角速度のPTの平均は60、180、300deg/secの順に膝伸展筋力110.3Nm、76.8Nm 、55.4Nm、脚伸展筋力227.2Nm、179.9Nm、144.9Nmであった.各hop testの平均はVJ 25.4cm、SHD 130.8cm、TH 2.3secであった.PT体重比とVJ・SHDとの間には膝伸展筋力・脚伸展筋力共に相関がなかった.THは、膝伸展筋力との相関はなかったが、脚伸展筋力では60deg/sec(r=-0.641,p<0.05)、180deg/sec(r=-0.66,p<0.05)、300deg/sec(r=-0.665,p<0.05)と全ての角速度で有意な相関があった.<BR><BR>【考察】本研究では、VJ及びSHDは筋力との相関を認めない結果となった.VJやSHDは股関節、膝関節を深く屈曲し、爆発的パワーを要する運動であり、stretch-shortening cycle(以下SSC)の影響が大きく、また、上肢を制約しなかったことで筋力以外にhop testに影響する要素が多かったと考えられる.THはVJ・SHDと比較して各関節の屈曲角度は小さく、SSCの影響は少ないと考えられ、より筋力の影響を反映する結果となった.等速性脚伸展筋力との相関が高いことから、CKCでの多関節運動筋力は、より速く身体を前方へ移動させる走動作への影響が高いことが示唆された.以上のことから、OKCでの等速性膝伸展筋力に加え、CKCでの等速性脚伸展筋力も競技復帰時の評価として有用であると考える.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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