改良型音叉(Y-S音叉)を用いた検査法の信頼性について
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概要
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【はじめに】<BR> 音叉による振動感覚検査は広く行われているが,ストップウォッチによる振動覚の秒数測定検査の客観性・信頼性については十分検討されていない.加えて,一般的な音叉のみを用いた感覚検査法では,数値による評価が困難であるといえる.Reidel-Seiffer(以下R-S)音叉は8-16段階の振動感覚評価が可能であるが,日本の臨床現場では積極的に使用されているとはいえない.R-S音叉の特徴は,音叉先端の二等辺三角形の振動残像による評価法であるが,これを吉川と杉元は一般の音叉に適用した(R-S略式音叉又はY-S音叉).そして,従来よりも簡便かつ精細な評価測定を行うために,C 128Hzの一般的な音叉にストップウォッチ計測法を組み合わせ,1/100秒間隔での測定を可能とした.我々はその検査法を吉川法と呼ぶ.本研究の目的は,吉川法の信頼性を検討することである.<BR><BR>【方法】<BR> A,B,Cの3名の検者が,Y-S音叉とストップウォッチ(ALBA製)を用いて振動覚検査を模擬した測定を実施した.C法は従来法の特徴を模擬しており,音叉を叩くと同時にストップウォッチを作動させた後,目標線への到達を目視判断にて停止させるものである.Y法は吉川法の特徴であり,開始基準線と目標線を設定した上でその間を通過する時間を計測する.以上の二通りを大別して,C法は区間長の異なる5種類,Y法は4種類をそれぞれ3回ランダムに測定した.測定データからSPSS11.0Jを用いて級内相関係数(以下ICC)を算出し,信頼性を検討した.3人の検者ごとの検者内信頼性はICC Case1の値で検討し,従来(C)法と吉川法(Y)の検者間信頼性はICC Case2の値で検討した.<BR><BR>【結果と考察】<BR> 3人の検者内ではICC(1,1)はC法(>0.93),Y法 (>0.98)共に高い値であった.検者間でもICC(2,1)はC法(>0.86),Y法(>0.95)とも高い値であった.統計結果から,両法は総じて検者内・検者間ともに信頼性が高いと判断できると思われる.しかし,C法のローデータでは検者間で1~2秒程度の差がみられ,振動覚検査値とした場合は誤差として大きいと考えられる.また,CとY法間でICC(2,1)の値からSpearman-Brownの公式を用いて両法の測定回数を検討したところ,C法でY法のICC平均(≒0.96)と同等のICCを得る場合は,3/5種類で約3人の検者平均を用いる必要性が推計された.従って,吉川(Y)法は従来(C)法よりも簡便であり,かつ信頼性に優れると考えられる.以上の点から,改良音叉によるストップウォッチを用いた振動覚検査は信頼性が高いことが示唆され,吉川法は臨床において有用であると思われる.
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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