超後期高齢者に対する回復期リハビリテーションの効果について(第1報)
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概要
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【はじめに】当院は平成19年7月に回復期リハビリテーション(リハ)病棟を開設した.その最大の特徴は、入院患者のうち80歳以上の超後期高齢者の占める割合が7割近くに達する点である.今回、超後期高齢者に対する回復期リハの効果について検討するため、当院回復期リハ病棟の現状について調査を行った.<BR><BR>【対象】平成19年7月より平成20年9月に当院回復期リハ病棟を退院した患者のうち80歳以上の超後期高齢者93名(男性27名、女性66名)で、原因疾患の内訳は、脳血管疾患等16名、運動器疾患58名、廃用症候群19名である.<BR><BR>【方法】1)対象者の入院時Barthel Index(以下BI)、退院時BI、リハ効果(退院時BI-入院時BI)、在院日数、1日あたりの実施単位数(総単位数/在院日数)在宅復帰状況についてカルテよりデータを収集した.なお、BIについては動作項目ごとの得点についても調査を行った.2)対象者を年齢の中央値(86歳)を境にY群とE群に分け、1)と同様の項目について2群間の比較を行った.統計処理にはカイ二乗検定、Mann-WhitneyのU検定を用い、有意水準5%とした.なお、本研究は当院倫理委員会の承認を得て行った.<BR><BR>【結果】1)対象者の入院時BI、退院時BIの平均はそれぞれ35.6点、52.5点、リハ効果の平均は17.7点であった.リハ効果の内訳は、マイナスが6%、変化なしが16%、5~20点が41%、25~40点が26%、45点以上が11%であった.BIにおける動作項目のうち効果の高い上位2項目は、移動、移乗であった.なお、平均在院日数は75日、1日あたりの平均実施単位数は1.9単位、在宅復帰率は43%であった.2)対象者93名のうちY群は45名(男性12名、女性33名)で平均年齢は82.0±1.5歳、E群は48名(男性15名、女性33名)で平均年齢は91.7±4.6歳であった.入院時BIの平均はY群41.4点、E群30.2点であり有意な差が認められたが(p<0.05)、それ以外の項目については両群の間に有意差はみられなかった.<BR><BR>【考察】当院回復期リハ病棟における超後期高齢者のADL自立度は低いものの、その8割近くに向上が認められた.中でも移動、移乗における効果が比較的高かったが、これらの能力の向上は活動範囲の拡大につながることが推測される.なお、2群間比較の結果、86歳以上であってもADL自立度は同程度に向上する傾向にあった.本調査結果と「全国回復期リハビリテーション病棟連絡協議会H19年(退院患者調査については平成18年)データ(以下全国データ)」との比較を行ったところ、対象者の入院時BI、退院時BI、在宅復帰率は全国データの結果を下回るもののリハ効果の値は同程度であり、超後期高齢者に対する回復期リハに効果があることが示唆された.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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