ラット膝関節屈曲拘縮モデルにおける神経周囲組織の自然放置とストレッチの効果
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概要
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【目的】関節拘縮に対する神経モビライゼーションについては、その意義、作用機序、治療効果を含め、不明な点が多い.前回、我々は2週間のラット膝関節拘縮モデルを用い、坐骨神経周囲スペースの消失と神経周膜の肥厚を観察し、これが神経の滑走性あるいは神経周囲の柔軟性低下を来す可能性を示唆した.今回、拘縮実験期間を延長するとともに、その後の神経周囲組織の自然史およびストレッチ治療の効果を観察した.<BR>【方法】関節拘縮に対する神経モビライゼーションについては、その意義、作用機序、治療効果を含め、不明な点が多い.前回、我々は2週間のラット膝関節拘縮モデルを用い、坐骨神経周囲スペースの消失と神経周膜の肥厚を観察し、これが神経の滑走性あるいは神経周囲の柔軟性低下を来す可能性を示唆した.今回、拘縮実験期間を延長するとともに、その後の神経周囲組織の自然史およびストレッチ治療の効果を観察した.<BR>【対象と方法】対象として9週齢のWistar系雄ラット16匹(体重240~270g)を用いた.対象を麻酔後、アルミ製金網で自作した固定器具を用いて左後肢を膝関節最大屈曲位にて固定し、股関節と足関節は影響が及ばないように留意した.対象を2週固定群と4週固定群に分け、固定のみ、固定後2週放置、固定後体重の15%の牽引力で2週間ストレッチの計6群に分類した.<BR>固定期間中、右後肢は自由としケージ内を自由に移動でき水、餌は自由に摂取可能であった.固定期間中は創と浮腫の予防に留意し、固定が外れた場合は速やかに再固定を行った.実験期間終了後にエーテルで安楽死後、股関節より離断し標本として採取した.採取した標本に対し固定、脱灰を行った後に大腿骨中間部にて垂直に切断し筋標本を採取した.その後中和、パラフィン包埋を行いヘマトキシリン・エオジン染色を行い光学顕微鏡下で坐骨神経周囲組織を病理組織学的に観察した.<BR>【結果】ラット膝関節拘縮モデルにおいて固定を行った全例で神経周膜と神経束の密着(神経周囲スペースの消失)と神経周膜の肥厚を観察し、2周固定、4周固定の間で量的および質的差異は見られなかった.固定期間後放置群、固定期間後ストレッチ群のいずれも明らかな改善傾向は見られなかった.<BR>【まとめ】固定期間を4週まで延長したが、神経周囲組織の変化には2週固定との差が見られず、神経周囲スペースの消失と神経周膜の肥厚という状態で定常化した可能性が考えられた.また、2週間の自然放置およびストレッチでは治療効果が期待できない可能性が示唆された.
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