物理療法学におけるOSCE導入の試み:評定尺度の違いによる検討
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概要
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【はじめに】<BR>当学院では、物理療法学の授業の一環として講義及び定期末試験終了後に1週間の学外実習を取り入れており、今年度より実習前に基本的態度、リスク管理、物理療法の臨床技能を向上する目的で「物理療法におけるOSCE」を実施した。今回、ビデオにて同一対象者に対し2肢選択と3肢選択にて評価し、教員間の一致率を比較検討した。<BR>【対象と方法】<BR>平成17年度理学療法学科学生79名を対象とし、物理療法学実習の開始6週間前にオリエンテーションを実施し、4週間の準備期間を与え、物理療法学実習開始2週間前にOSCEを実施した。OSCE実施方法は、学生2名1組を1ステーション(以下、ST)に配置し、1名あたり10分間の課題を提示した。物理療法の課題は、10種類とし、5ヶ所のSTに2項目ずつ割り当て、学生には10種類の物理療法のうち、その場で提示される1種類のみの課題を実施させた。各STでは教員が評価者となり、患者情報について1分間の黙読をし、模擬患者役の学生に対して9分間で課題を実施した。教員は、基本的態度、物理療法の準備・実施に関する15項目について、「できた(1点)」、「できない(0点)」の2段階で評価した。その後、成績良好者と成績不良者を選択し、残りの教員9名がビデオにて評価した。また5種類に限り、ビデオにて新たに3肢選択「できた2点」、「不十分1点」、「できなかった0点」にて再度評価し、2肢選択との一致率の差を比較した。<BR>【結果】<BR>学生79名の平均点は15点満点中11.6±2.3点であった。教員間の一致率の平均は、成績良好群で2肢選択が93.2%、3肢選択が86.3%、成績不良群で2肢選択が80.3%、3肢選択が65.2%であった。また成績良好群、成績不良群とも2肢選択は3肢選択に比べ一致率は有意に高かった(p<0.05、p<0.01)。<BR>【考察】<BR>今回、物理療法学の講義の一環としてOSCEを導入し、評定尺度の違いによる一致率の差を検討した。一般に評定尺度は、2肢選択は3肢選択に比べ一致率は高いが、浅いレベルの評価になるとの報告がある。成績良好群と成績不良群を2肢選択と3肢選択にて比較したところ、3肢選択にて低下し、その中でも成績不良群は著しく低下していた。著しく低下した項目をみてみると、評価項目の文章中に「配慮したか」、「適量」などの曖昧な表現や評価の基準が個人によって異なるものについて低下していた。成績不良群は状況判断が不十分であるため、実施はしているものの質的側面で評価者間の判定に差が出たものと思われる。今後、より客観的な評価を行うために細かな評価基準の作成、評価者の事前練習などが必要と思われる。
- 公益社団法人 日本理学療法士協会の論文
公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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