キセノン光による腰部交感神経節近傍照射の効果
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概要
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【目的】<BR> 低反応レベルレーザー治療(LLLT)による交感神経ブロックとしては,星状神経節ブロックおよび腰部交感神経節ブロックが知られている.キセノン光でもLLLTによる交感神経ブロックと同様の効果が得られると数多く報告されている.キセノン光による交感神経ブロックに関する検討は,皮膚温度や心電図R-R間隔変動係数(CVR-R)や疼痛の程度による検討が行われている.しかし,施行前後の身体機能変化に関する検討はほとんどみられない.<BR> 本研究の目的は,健常者および腰痛症者を対象としてキセノン光による腰部交感神経節近傍照射によるCVR-Rおよび身体機能へ与える影響を検討することである.<BR>【対象と方法】<BR> 対象は,健常成人15例および慢性腰痛症患者15例の計30例とした.対象を健常者施行群10名(健常Xe群),健常コントロール群5名(健常C群),有疾患者施行群10名(有疾患Xe群),有疾患者コントロール群5名(有疾患C群)の4群に振り分けた.計測は,温度および湿度を可能な限り一定に保った室内にて15分間の馴化時間をおいた後,キセノン光治療器(日本医広社製キセノン光治療器EXCEL-Xe)を用いて,腹臥位にてXe群には腰部交感神経節近傍にキセノン光を10分間照射した.一方,C群には治療器は設置したが照射は行わなかった.自律神経系への影響を検討するため,日本コーリン社製formを用いて連続する100心拍のCVR-Rを照射前と照射終了直後および照射10分後に測定した.身体機能への影響を検討するため,健常者では照射前後のFFD,SLRを測定した.有疾患者は,照射前後の疼痛の程度をVASにより評価した.また,身体機能への影響として健常者と同様にFFD,SLRを評価した.統計学的処理は,Wilcoxonの符号付順位和検定を用いて,有意水準を5%未満として検討した.<BR>【結果と考察】<BR> 本研究の結果,健常Xe群,有疾患Xe群にてキセノン光を照射することで安静時に比べてCVR-Rが有意に上昇した.しかし,健常C群,有疾患C群では,CVR-Rの有意な変化はみられなかった.この結果は,キセノン光の照射により交感神経系がブロックされ副交感神経系が優位になったためと考える.身体機能面においては,健常および有疾患者ともにXe群ではFFD,SLRの有意な改善を認めた.しかし,健常者,有疾患者ともにC群では有意な変化を認められなかった.また,有疾患者Xe群ではVASの有意な低下を認めたが,有疾患者C群においてはVASの変化は認められなかった.<BR> 以上の結果から,今後症例を増やしてさらに詳細に検討する必要があるが,キセノン光による腰部交感神経節近傍照射は慢性腰痛患者に対して有効であると考える.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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