NIRSによる転倒予防体操中の脳活動の検討:荒川ころばん体操
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概要
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【はじめに】<BR>近年,計算・音読や運動により前頭前野を活性化することで,高齢者の認知機能やコミュニケーション機能,身辺機能などの前頭前野機能の維持・改善をする試みがなされている.我々は荒川区と共同で高齢者向け転倒予防・体力づくりを目的とした17分間の荒川ころばん体操を開発しH16年度の実績では区内で延35000人が参加されている.体操には音楽に合わせて体を動かす,荒川のあーと歌いながら足で字を書く,普段行わないような上肢・下肢の組み合わせ運動,バランス運動等があり,それらは体操の楽しみを増すことや精神機能面での効果を期待して含まれている.<BR>【目的】<BR>本研究の目的は近赤外分光法(Near Infrared Spectroscopy; NIRS)を用い,被験者に身体的拘束を課すことなく,非侵襲に荒川ころばん体操中の前頭前野の脳活動を計測することである.<BR>【方法】<BR>被験者は荒川区在住の元気高齢者女性3名(平均年齢69.5歳)である.被験者すべての体操の経験は体操推進リーダーとして荒川ころばん体操を週2回以上2年以上実施されている.推進リーダーとして役割は各会場の運営や体操参加者の前でのデモンストレーション等である.事前に計測装置や実験手順の安全性について十分な説明をし,同意を得た上で実験を開始した.<BR> 計測は島津製作所製近赤外光イメージング装置OMM-3000を使用し,被験者の前額部から45チャンネル同時計測した.測定課題は指遊び(5分),荒川ころばん体操(17分),トレッドミル歩行(ゆっくりの散歩速度)とし,課題の順序はランダムに実施した.トレッドミル歩行は運動による血流増加を考慮し,コントロール条件とする目的で実施した.体操時の環境としては普段の体操会場の雰囲気に近づけるため,ビデオの音楽に合わせ被験者と4人の学生が一緒に体操を実施した.NIRSでは酸素化ヘモグロビン(oxyHb)と脱酸素化ヘモグロビン(deoxyHb)の濃度変化を測定することができるが,oxyHbの変化が局所脳血流の変化と最も相関が高いため,本研究ではoxyHbを脳活動の指標として用いた.<BR>【結果】被験者3人中3名でトレッドミル歩行中に比べ指遊び,荒川ころばん体操実施中に前頭前野でoxyHbの増加が認められた.その中でも,坐位と立位で歌いながらあ・ら・か・わと下肢で字を書く,手と足の組み合わせ運動での増加が著明であった.<BR>【まとめ】本研究では高齢者の被験者全員で荒川ころばん体操中の前頭前野の活性化がみられたが,被験者は3名と少なく体操の経験の有無や雰囲気による影響等,今後検討を進めていきたい.<BR><BR><BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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