デイサービス利用高齢者に対するスクワットマシントレーニングの効果:無作為化比較対照試験
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概要
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【目的】<BR>下肢筋力は高齢者のADL,転倒,バランスなどに関連していることが明らかにされており,生活機能を低下させ,要介護状態を惹起する原因とされている.高齢者の筋力はトレーニングにより改善することも明らかにされており,我々は高齢者に対するマシントレーニングの効果を明らかにしている.しかし,理学療法士などの専門家がいないデイサービスにおいて介護職員による筋力トレーニングの効果を検証した研究は少ない.そこで,本研究はデイサービスを利用している地域在住高齢者に対して,理学療法士に教育を受けた介護職員によりスクワットマシントレーニングを実施し,その効果を検証することを目的とした.<BR>【方法】<BR>対象はデイサービスを利用する地域在住高齢者99名であった.すべての対象に対して,事前に本研究の趣旨を説明し署名にて同意を得た.対象のうち,Mental States Questionnaireの誤答が7問以上,要介護度4以上のいずれかに該当した27名を除外した72名(男性27名,女性45名)を無作為にトレーニング群とコントロール群に割り付けた.割り付けは事務局により行われた.トレーニング群はスクワットマシン(ステッキレスDrive3,OGA社製)を用いたスクワット運動を週に1日もしくは2日,12週間行った.スクワット運動20回を1セットとし3セットを行った.このスクワットマシンは補助機能を搭載しており,筋力の弱い虚弱高齢者でも使用可能であることが特徴である.トレーニングは理学療法士の指導を受けた介護職員により実施された.なお,安全対策として膝痛を有する対象に対しては,付属のストッパーを使用し一定以上に膝関節が屈曲することないように配慮した.コントロール群には12週間,スクワットマシンを用いないこと以外には規制を設けず,運動習慣を変更させないように指示した.介入期間の前後に膝伸展筋力,握力,Timed Up & Go Test(以下,TUG),Functional Reach Test(以下,FR),Chair Stand Test(以下,CST)を測定した.CSTは椅子からの立ち座り動作が30秒間に何回できるかを測定した.なお,調査員は介入に関わらない者が行い一重盲検にて実施した.統計解析にはベースライン時の両群間の比較には対応のないt検定,トレーニング効果の検討には反復測定分散分析を用いた.<BR>【結果】<BR>両群とも11名が介入後調査を受けることができなかった.ベースライン時には両群間に差は認められなかった.反復測定分散分析で膝伸展筋力,握力,CSTにて群間で有意差を認め,介入群において効果が確認された.TUG,FRでは有意差は認められなかった.<BR>【考察】<BR>デイサービス職員によるスクワットマシントレーニングは高齢者の筋力を改善させることが明らかになった.しかし,改善効果は筋力のみに限られており,筋力トレーニングに加えて,パフォーマンスが改善するような介入を実施するべきであり,その方法の確立が急務の課題であると考えられた.<BR>
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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