当院における病棟連携の阻害因子
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概要
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【目的】当院は一般病床26,療養型病床群29,介護療養型医療施設16あり,計71床のケアミックス体制をとっており,リハビリテーション(以下リハビリ)センターは平成11年に開設されている.リハビリにおいて多職種間の連携が重要であることは自明なことと思われるが,開設以降連携へ向けた積極的な働きかけに乏しく,患者情報交換が不足し,目標が不明瞭なことが見受けられた.そこで平成17年度より病棟スタッフに対する当センターへの意識調査を行った.その結果,連携を阻害する因子について若干の知見が得られたのでここに報告する.<BR>【方法】患者の日常生活向上能力のためにリハビリサービスがどの程度貢献しているかを知ることを名目として意識調査を行った.期間は平成17年4月~10月で,3ヶ月ごとに3回に分けて行った.対象は当院病棟勤務の看護職・介護職であり,質問項目は3回とも1)身体機能関係(拘縮予防,筋力維持,自主トレーニング指導,ポジショニング,体位交換),2)動作能力関係(起き上がり,移乗,その他身の回り全般),3)全般(患者及びスタッフ間のコミュニケーション)である.評価は「非常に満足」「満足」(以下あわせて肯定的)「どちらともいえない」(以下中間)「不満」「非常に不満」(以下あわせて否定的)までの5段階とし,集計し対策を立案実行してその変化を調べた.<BR>【結果】1)~3)全体で,1回目調査(回収率76%)は肯定的9%,中間71%,否定的20%であり,2回目調査(回収率73%)は肯定的23%,中間66%,否定的11%,3回目調査(回収率76%)は,肯定的26%,中間67%,否定的7%であった.1回目では特に自主トレーニング指導,ポジショニング,身の回り動作全般に関しての肯定的評価は0であった.自由意見として移乗等の技術講習を望む声があり,講習会開催,病棟でのリハビリを増やすことで対応した.2回目では自由意見としてカンファレンスの必要性を訴えるものがあり,以降定期カンファレンスを実施した.<BR>【考察】1~3回目の結果の変化は1回目以降より行ってきた対策による効果と考えられる.これらの対策は文献にも多く述べられていることであるが,実行に当たっては仕事内容の増加につながり抵抗感を抱きやすいと思われる.また中間的な評価の多さは当センターの認知度の低さも原因であると考えた.そこで他職種の要望を積極的に聞きにいき実行することから始めた.それにより信頼関係を高めていき,次に当センターとしての要求を出していく.そのように順を追っていくことで連携のシステムが構築されていくと考えられる.<BR>【まとめ】これらのことを総合すると,病棟連携の阻害因子として浮かび上がるのはスタッフ間の仕事内容への認知度の低さや興味の低さがあると思われる.単に他職種にやる気を求めるのではなく,互いの信頼を高めることで連携を充実させていくことが重要と考える.
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公益社団法人 日本理学療法士協会 | 論文
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